突然「死ね」1日300件超の書き込み…恐怖感じたスマイリーキクチさんの今 平気で「うざい」崩壊状態
インターネットの会員制交流サイト(SNS)を通じて身に覚えのない殺人事件の犯人だと一方的に書き込まれ、殺害予告や誹謗(ひぼう)中傷で長年苦しみ続けたタレントのスマイリーキクチさんが15日、越谷コミュニティセンター(越谷市)で人権講演会を行った。キクチさんは自身の体験談や最近広がる新型コロナウイルスのデマを踏まえ、「正しい情報を判断し、読み取ることが必要」とネット社会の在り方や万が一の時の対処法を語った。
キクチさんは東京都足立区出身。1993年にお笑いコンビを結成し、その後はピン芸人で活躍した。仕事が軌道に乗り始めた矢先の99年、出身地の足立区で起きた殺人事件の犯人だという書き込みが突然ネット上にあふれ、さまざまな誹謗(ひぼう)中傷を受けた。所属事務所ホームページには「死ね」「犯人はお前だ」など1日300件以上の書き込みが相次ぎ、中には家族を脅迫する内容もあった。影響は徐々に広がり、出演したテレビ局やスポンサー企業にも苦情が殺到。タレント活動は事実上の休養を余儀なくされた。当時は警察へ相談に行っても相手にされず、人間不信に陥ったという。2008年、警察に被害届を出し、複数の特定者を検挙。11年には自身の経験を書いた書籍「突然、僕は殺人犯にされた」を出版した。キクチさんは「うその情報が一瞬で社会全体に広がり、掲示板の書き込みも消すことができない。自分の名前が至る所で拡散している恐怖を感じた」と当時を振り返る。
現在は自身の経験を踏まえ、インターネットに関するマナー講座や講演、執筆活動を精力的に行う。
インターネットが不可欠な現代だからこそ数々の危険が潜み、背中合わせの状況を知ることが大切だとキクチさんは強調する。
スマートフォンの普及に伴い、ネットいじめが低年齢化する現状もキクチさんは危惧する。「子どもたちが『うざい』『消えろ』など平気で投稿できるのは、まさにモラルの崩壊状態。家庭や学校など子どもたちを取り巻く環境が一番大切」と話す。
新型コロナ感染拡大によって生まれたデマやいじめに対しては「ウイルスと同様にデマや誹謗も人へと急速にうつり、広がる。言葉一つがどれだけの人を苦しめているのかを、もう一度考えてほしい」。キクチさんは身振り手振りを交え、声を大にして訴える。
自身の経験から被害を受けた時の対処法としては、画像の保存や無言電話の録音などを紹介し、「SNSを使うのが悪いわけでなく、使い方を間違えるのが一番の危険」と強調。その上で「自分の見聞きした情報が正しいか。正しいを疑う正義感を持たないと、誰でも加害者となる。インターネットの危険性を認識し、正しく情報に接しよう」と呼び掛けた。