埼玉新聞

 

ページめくるワクワクやドキドキ感をぜひ 埼玉・越谷で私設図書館を開設 目指すは家庭文庫のような空間

  • 「読み聞かせをしている時の子どもたちの表情が好き」と話す戸田道子さん=越谷市越ケ谷本町

 今なお宿場町の面影残る越谷市越ケ谷本町。歴史ある建物が並ぶ旧日光街道を少し入ると、鉄筋コンクリート造りの蔵が目に飛び込む。市内最古の洋式建築物で1917年に建てられた。その1階部分が地域の憩いの場へ様変わりしたのは2020年4月。同市赤山町の戸田道子さん(55)が自身の本を持ち込み、私設図書館「watage(わたげ)」を開設した。

 木の温かみある空間(約30平方メートル)には絵本から小説まで約千冊がずらりと並ぶ。カフェスペースもあり、利用者は地域の子育てママから高齢者まで幅広い。「見知らぬ人同士がこの場所を通じて知り合い、気軽に会話できる空間をつくりたかった」

 結婚と出産を機に越谷へ。長男が通う小学校では読み聞かせボランティアに参加し、今も県立図書館の読み聞かせボランティアの指導者として活動する。もちろん自宅でも読み聞かせを行ってきたが、長男の成長とともに不要な本が増え、活用法を模索していた。そんな中、知人を通じて蔵を借り受け、私設図書館の開設を思い立った。

 運営には蔵の家賃や光熱費、カフェの材料費などがかかり、戸田さんはアルバイトの一部を運営費に充てている。目指すのは昭和の時代に自宅を開放して誰でも自由に本を楽しめる家庭文庫のような空間。「自分の趣味の場所でもあり、何より地域の皆さんに楽しんでもらうことが一番」と思いを強くする。

 デジタル全盛時代だが、紙の本でしか味わえない良さもあるという。ページをめくるワクワクやドキドキ感など、戸田さんは「タブレットと紙の本では同じ内容でも味わい方は大きく違う。本離れと言われるが、この図書館を通じて本の良さも伝えていきたい」と大きな夢を抱く。

 開設は日、月、火曜日のみ。午前10時半~午後5時。問い合わせは、戸田さん(電話090・5314・5500)へ。

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