アニサキスの心配なし!海なし県発「温泉サバ」 神川で挑戦1年、全滅の悲劇越え出荷へ 今後はイベントも
昨年10月下旬に神川町の「おふろcafe 白寿の湯」敷地内でオープンした「温泉サバ陸上養殖場」で育ったサバの中に、出荷基準サイズまで成長したサバが出てきた。オープンから2カ月で1度全滅し、今年4月から再始動をしていたサバの養殖。養殖場を管理している温泉道場の鎌田奈津実さんは「来年6月には、300~400尾が出荷サイズにまで成長する予定。その頃には、陸上養殖だからこそできるサバの『生食』、そして関連したイベントを用意していきたい」と話している。
温泉サバ陸上養殖場では、閉鎖循環型陸上養殖システムを導入してサバを育てている。サバの陸上養殖に参入する事業者は、全国でもあまり例はなく、適切な養殖法は確立されていないという。そのため、協力会社とともに、エサの量や一つの水槽で育てる適正なサバの数など試行錯誤を繰り返しながらこれまで養殖を続けてきた。
「一番つらかったのは、オープンから2カ月でサバが全滅したときのこと。前日まで元気に泳いでいたサバが、全て水面に浮いていた光景は忘れられません」と鎌田さん。原因は、水中のバクテリアが、サバたちの排せつ物から発生するアンモニアを分解したときに生成した亜硝酸による中毒だったという。そこからは、サバたちが暮らす水質改善にも着手。今年、4月に新たな稚魚1千匹を迎え入れこれまで育ててきた。
全長5センチから20センチ以上に成長し、300グラム以上の出荷基準サイズに成長したサバの個体も出てきた12月17、18日には、おふろcafe 白寿の湯内のレストランで試食会を実施。塩焼きとともに生サバの漬けを提供した。
海で育つサバは、寄生虫アニサキスの寄生の可能性があり、そのサバを加熱をせずに人が食べると食中毒を引き起こすが、陸上養殖で育ったサバには、アニサキスの寄生の心配はない。だからこそ安全に食べることのできるサバの生食は、同所だからこそ食べることができるメニューとなる。
来年6月には、300~400尾のサバが出荷基準サイズとなる予定。「例えば成長したサバを釣り上げて、その場で締めて、そのまま生食で食べられるような『体験』も届けられる施設にしていけたら」と鎌田さん。さらに「珍しい1次産業に取り組む近隣地域の事業者さんとコラボをして、地域の新たな観光産業へと成長していけたら」と今後の展望を思い描いている。