体が動かない闘病女性、頭に冒険物語が浮かぶ 復帰し本発行、出版社も立ち上げ、本は保育・幼稚園で教材に
朝霞市に住む料理研究家の彩陽(いろは)さん(50)=本名・菅尾陽子=は、自身の闘病体験をもとに食の大切さを子どもたちに絵本や小説で伝えている。25日には3冊目の作品となる絵本「かむにんじゃ2こころ」を出版。「クリスマスに合わせ、たくさんの人に助けてもらった恩返しの思いを絵本に込めた」と話している。
イギリスで料理を学び、レストランのメニュー開発などをしていた彩陽さん。調理師とソムリエの資格を持ち、飲食店起業の準備をしていた2007年、突然の病に襲われた。「脳幹出血を伴う珍しい病気だった。幸いアメリカにいた医師に手術していただいた」という。
その後、自宅で料理教室を営んでいた15年、病気が再発。都内の病院に3カ月入院していた時に構想したのが、食を巡る冒険ファンタジーの物語だった。「夢の中で『私、書かなきゃ』と繰り返し言っていた。体が動かない中、空想の世界が広がった」とほほ笑む。17年12月24日、クリスマスイブの日に255ページに及ぶ「食ものがたり」を発刊。自身で出版社も立ち上げた。
今回の絵本は、昨年5月に出した「かむにんじゃ」シリーズの2作目。「医師から言われたかむ習慣で体調がよくなった」という体験をもとに日本の食文化を伝えている。
「かみ方を変えることで栄養が取りやすくなり味も分かる。呼吸が安定し、気持ちも落ち着く」と話し、忍者の歌も作った。保育園や幼稚園で教材として活用されているほか、読み聞かせをする大人たちを通して、かむ習慣を広げている。
2作目は、忙しい母親に寄り添い、心の中を海で表現。親子でよくかむことで、心も穏やかになる姿を描いている。「太古の昔、朝霞の周りは海だったという。子どもたちと地域の歴史にも触れてほしい」。原画はおおのなおとさん、絵うさみたまえさん。出版社「SUGAO」発行。税別1400円。
問い合わせは、同出版社(電話080・3594・1732)へ。