1人「最大1万円相当」給付、埼玉の子育て支援詳細は 計10万円給付など国支援と合わせ体制構築 さらに
県は13日に2023年度当初予算案を発表し、一般会計総額は2兆2110億9500万円で過去2番目の規模となった。新型コロナウイルス感染症対策に取り組みながら、社会的課題の解決と経済の両立、「日本一暮らしやすい埼玉」の実現を目指す。政府が「異次元の少子化対策」を掲げる中、県も子育て支援に力を入れている。
■最大1万円相当の現物給付
県は主要施策の一つに「子育てに希望が持てる社会の実現」を挙げ、経済的支援のほか、保育所待機児童対策、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者支援など総額約144億2千万円を計上。今年4月以降に生まれた子ども1人当たり最大1万円相当の「ギフトボックス」を給付する方針だ。現物を手渡すことで、孤立した環境で相談や支援から外れる「孤育て(こそだて)」防止につなげる。
県は新規事業「子育てファミリー応援事業」として、23年4月から24年3月に子どもが生まれた世帯に、最大1万円相当の現物を給付するギフトボックス4万5千人分を計上した。現物は数種から選択できる形にする予定で、市町村の出産祝い金などに上乗せする。原則手渡しとし、市町村が家庭訪問などに持参することで対面率を上げ、相談や支援につなげる考えだ。
県では23年3月まで、第3子以上が生まれた世帯にクーポン券5万円分を配布している。婚活、子育て中の当事者らの意見交換会では「額を減らしても第1子から対象にすべき」「機運醸成が目的で、5万円程度では経済支援とは言えない」などの声もあり、第1子からを対象に支援を再構築。計10万円の「出産・子育て応援給付金」などの国の経済支援と合わせ、出産前から子育て中までの一貫した支援体制を構築する。
■経済支援でなく孤立防止
県少子政策課では22年5~6月に、県内在住の20~39歳約千人に独身や既婚者別の調査を実施。既婚者で理想の子ども数を「持てていない」と回答したのは全体の54・6%で、半数を上回った。その理由は複数回答で「子育てや教育にお金がかかりすぎる」「欲しいができない」「これ以上育児の心理的・肉体的負担に耐えられない」などが挙がった。
現物支給に関しては市町村から「使用用途が不明確になる」という意見もあったとし、「ギフトボックスは経済支援でなく、あくまで『孤育て』対策」と強調。核家族化やひとり親世帯の増加により、「ワンオペ育児」が広がっている可能性もある。「現物給付で確実につながり、大変な時に市町村窓口のチラシを見て『これだ』と気付いてほしい。見守っていることを伝えることが目的」と説明した。
■「支援つなぐツールに」
子どもの学習支援を行う「彩の国子ども・若者支援ネットワーク」は、20年度から家庭訪問を通じた子育て世帯の見守り事業を開始した。悩み事を聞き取り、病院への同行や保育所の申請書作成サポートなど、支援内容は多岐にわたる。支援員は、家庭訪問前にコミュニケーションなどについての研修を受ける。会話のきっかけづくりのため、レトルト食品や子どものおもちゃ、文房具、日用品など、さまざまな寄付品を持参し、必要な物を選べるようにしているという。
見守り事業の担当者は「自分の子ども時代の経験などから子育てに前向きになれず、『これ以上できない』と情報を絶ってしまうケースが見られる。大切なのは親の意見を聞き、共感して、やりたいことを後押しすること。訪問での対応の仕方によっては、その後の支援をシャットアウトされてしまうことも結構ある」と難しさを語る。土屋匠宇三代表理事は「子育てで困っていない家庭はない。現物というツールを使って、全ての世帯が支援につながってほしい」と期待した。