埼玉新聞

 

問い合わせ急増、アクセル踏み間違い防止装置 川口のナンキ工業が開発 踏み込み強度は調整可、特許を取得

  • STOPペダルの構造を説明するナンキ工業の南平次社長

 高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いに起因する交通事故が全国で多発している中、川口市の機械整備業ナンキ工業が開発した踏み間違い防止装置「STOPペダル」が注目を集めている。間違えてアクセルを踏み込んでもブレーキがかかる。販売を始めた今年4月の購入問い合わせは1日5件程度だったが、4月19日に東京・池袋で80代男性が引き起こした暴走死亡事故などを背景に5月の連休明け以降は、問い合わせが1日30~50件と約10倍に急増している。

 南平次社長(79)によるとSTOPペダルは、アクセルとブレーキ本体が連結していて、自動車のアクセルペダルを外し、ブレーキアームの中ほどに付け替えて設置する。ペダルのアクセル部分を急に強く踏み込むとロックが外れ、「ピピピ」という警告音と共にアクセルが抑制され、ブレーキがかかる。踏み込み強度は調整できる。

■強く踏むと作動

 開発を始めたのは2010年。当時も踏み間違いの事故が多く「アクセルペダルを強く踏むとブレーキがかかる装置があると面白い」と考え、始めた。半年で基本形が完成。13年には国内特許を取得した。

 公的検査機関での試験を終えて、岡山県のメーカーと県内の販売店と連携して製品化、19年4月から販売を開始した。価格は9万9800円(税別)、設置費は3万円程度。取り付け可能な車種は現在約30で順次拡大している。南社長も自家用車に装備し車検も通っている。

 センサーで障害物を感知して減速する防止装置はあるが、低速時のみでしかブレーキが作動しない。しかしSTOPペダルは速度に関係なく強く踏み込めば作動するのが、大きな差だ。

 購入に関する問い合わせは、池袋の事故後のゴールデンウィーク以降、急増。「大半が高齢運転者、またはその家族」(南社長)で、その都度取扱店を紹介している。現状で、注文から取り付けまで最大3カ月かかる状況という。各種メディアで取り上げられ、自治体や正規販売社からの問い合わせや視察も相次ぐ。

■車必要な高齢者に

 高齢者が運転する車両事故が多発していることを背景に、運転免許証を自主返納する高齢者が増えている。南社長は「国内では地域によっては、車がないと生活が難しい高齢者が多い」として、自身も現状では返納の考えはない。一方、高齢運転者向けの新運転免許制度創設への動きには「車が必要な高齢者のためにも必要」と支持する。

 開発した防止装置については、車生活が不可欠という環境にある高齢ドライバーのためにも「事故防止策を提示できて良かった」と話す。

 ただ開発当初から現在まで、事故が減らず「踏み間違いの事故が起きても、自動車メーカーには責任が問われない。問われるようになってからでは遅い。その前に国がメーカーに防止策を施した車種の開発を義務付けるべきではないか」との考えを示した。

ツイート シェア シェア