埼玉新聞

 

特殊詐欺の犯人側に向けPR 埼玉県警が攻めの広報「警察官が声を掛けています」「受け子の特徴は…」

  • 改札前に立って周囲を見渡す浦和署員(右)。近くで音声を流して警戒する=6月中旬、JR浦和駅

 特殊詐欺撲滅を目指す県警は詐欺グループの摘発や県民への広報啓発活動とともに、現金やキャッシュカードを受け取りに来る「受け子」対策に全力を挙げている。

 浦和署では5月から、高齢者らが被害に遭わないように注意喚起する従来の広報に加えて、鉄道駅を利用する受け子ら犯人側に向けて警察官が警戒していることを知らせる「攻めの広報」を展開。被害を防ぐ「守りの広報」と合わせて特殊詐欺被害の抑止を図る。

 「スマホを操作されている方、イヤホンを装着されている方、マスクをされている方に警察官が声を掛けさせていただいております。ご協力をお願いします」。6月中旬、さいたま市浦和区のJR浦和駅では浦和署員が駅頭に立って警戒するとともに、スピーカーで音声を流して「監視の目」をアピールしていた。

 県警特殊詐欺対策室によると、県内の特殊詐欺事件の約5割がキャッシュカード手交型で、受け子らの多くは電車やタクシーを利用して被害者宅を訪れる。そのため浦和署では同様の音声を管内の鉄道駅や駅前交番、パトロール中のパトカーで放送し、犯人側の動きをけん制している。

 また、高齢者らに対する広報も、これまでは詐欺の手口を紹介して被害防止を呼び掛けていたが、手口を知っていても被害に遭う人が後を絶たないことから、受け子の特徴の周知を徹底。同署が挙げる不審者の例としては、スーツが不似合い、マスクをしている、スマホを操作しているなど。

 防犯講話や戸別訪問で1カ月約3千枚のチラシを配布し説明している。

 同署管内の特殊詐欺被害認知件数は今年1月から6月18日までが前年同期比5件減の26件。6月1~18日は同7件減の0件と減少傾向で推移している。

 一方、署が認知した詐欺の予兆電話数は昨年5月が111件で、今年5月は216件とほぼ倍増。被害を抑えつつ、不審な電話に気付き、通報する市民が増えている。

 同署の関口啓一署長は、「予兆の通報が増えているのは市民の意識の高まり。受け子には浦和や埼玉で犯行がやりにくいと意識させたい。振り込め詐欺を止め、犯人を逮捕するためにあらゆる対策を取っていきたい」と話した。

 県警特殊詐欺対策室は浦和署の取り組みを全署に紹介。「犯人側に対する強いメッセージを発信するとともに、一般市民から通報してもらうことで受け子を撃退したい」としている。

ツイート シェア シェア