え、気付けば自分が犯人…SNSあふれる「口座売買」、何も知らず売ると大変なことに 割に合わない実態
銀行口座の売買や譲渡を促す投稿が、インターネットの交流サイト(SNS)上で繰り返されている。自身の銀行口座を売ったり譲ったりした場合は、犯罪収益移転防止法違反に当たり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性がある。しかし、犯罪と知らずに手を染めるケースも少なくない。捜査関係者によると、埼玉県警は1日、30代の男性消防士を同法違反で書類送検。口座を他人に売却する行為はなくならず、警察や金融機関は警鐘を鳴らしている。
県警組織犯罪対策課によると、銀行口座の売却や譲渡などによる摘発件数は、昨年1年間で142件(前年同期比24件減)。不正に取引された口座は特殊詐欺など犯罪組織に悪用されているとみられる。
SNS上では、口座買い取りをうたう投稿が後を絶たず、指定の銀行名を出し、その銀行口座のみを買い取ると呼びかける投稿も見られた。
県警幹部によると、口座を売却したが、売却先から代金が振り込まれないといった場合も多く、中には自身の行為が犯罪と知らず、警察に相談する人もいるという。
埼玉りそな銀行(さいたま市浦和区)は、窓口での口座開設時、約款で「口座の譲渡はできません」などと説明。アプリで手続きの途中でも、画面に「口座の売買・譲渡は犯罪です」などと赤い字で掲載し、犯罪に加担しないよう注意を呼びかけている。
同行コンプライアンス統括部の川添一彦グループリーダーは「不正利用が分かれば口座を凍結する」と語る。不正利用をした場合は情報が残り今後、全国の銀行で口座開設が行えなくなる恐れもあるといい、「割に合わないと思う」と口にする。
同行では、昨年から高校生向けに金融経済教育に関する講義を実施。金融犯罪についても取り上げており、「不正な口座売買についても注意喚起していきたい」としている。