埼玉新聞

 

中1自殺、涙浮かべる母…紙に「ありがとう」 亡くなる当日、家出る息子見送る「既に決めていたのだろう」

  • 遺影を前に会見する男子生徒の母親=2日午前、さいたま市

 昨年8月にさいたま市立南浦和中学校1年の男子生徒=当時(13)=が自殺し、遺族が部活動顧問の指導が原因として、第三者による調査を求めていた問題でさいたま市教育委員会は2日、弁護士らによる専門調査員を組織し、今月4日から、調査を行うと発表した。市教委は以前から顧問の不適切な指導を指摘する声が相次いでいたことを明らかにし、同日会見した男子生徒の母親は「しっかり調査をしてほしい」と訴えた。

 男子生徒の母親や市教委によると、男子生徒は昨年8月26日、部活動に行くとして外出した後に自殺した。母親には前日、所属していたバドミントン部の男性顧問から、「男子生徒が部活動を休み、ゲームセンターにいた。翌日の部活動で指導する」旨の電話があったという。

 顧問の男性教諭については、自殺以前の昨年5月、保護者らから指導が乱暴だと指摘する声があり、保護者会が開かれた。市教委が昨年6月、全市立学校で行ったアンケートでは「子どもの胸ぐらをつかむ」との回答があった。昨年12月、遺族の意向を受けて同校が全生徒対象に行った部活動に関するアンケートでは、「頭が悪い」「やりたくておまえらの顧問やってるわけじゃねえ」「お前、存在する意味あるのか」などの暴言を吐かれたとの回答があった。「顧問教諭の言い方がきつかった。(男子生徒に)圧をかけた」という記述もあった。

 男性教諭は校長から口頭で注意を受けたが処分はされず、今年春に別の中学校に異動し、現在も運動部の顧問を務めている。

■母親「しっかり調査を」

 「息子は部活を一生懸命頑張りたいと希望に胸を膨らませていた。真実を知りたい。しっかりと部活の調査をしてほしい」。第三者委員会設置を受け、2日に会見した母親は時折声を詰まらせ、涙を浮かべて訴えた。

 一番の思い出は自殺する5日前、一緒に行った富士登山。「俺、部活で体力ついたのかもしれないなあ」。そう話しながら力を合わせて懸命に登った。しかし「部活遅れててやばいんだよなあ」「明日休んじゃだめかな」と弱音を吐くことがあったという。

 「争いが嫌いで誰に対しても優しく、ネガティブなことを言わない子。何か心の中に思うことがあったのでは」。

 亡くなる8月26日は午前10時半から部活があった。熱中症を心配してタオルを手渡し、普段と変わらず見送った。「この時、既に心の中では決めていたのだろう」と母親は目を潤ませる。

 後日、レポート用紙に「今までありがとう」と書かれた遺書らしきものも見つかった。

 亡くなって10カ月、今まで経緯を公にせず、自分を後悔する時もあったという。母親は「市教育委は事実を明らかにして。公平で正確な第三者委員会の調査を望んでいます」と話した。

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