<所沢中2殺害>少年に猟奇性なく つねられて人を刺す…感じる落差 未熟さから一気に刺したか
所沢市で市立中学2年の本郷功太郎さん(13)が刃物で刺されて死亡し、同級生の少年(14)が逮捕された事件は12日、発生から1週間を迎えた。捜査関係者らによると、少年は「教科書を隠された」などと供述。所沢市教育委員会によると、「20回ほどつねられた」と話していたという。一方でいつも一緒にいるなど仲は良かったとされる。専門家は少年が本郷さんとの関係で悩んでいた可能性はあるものの、刃物で刺す行為との間には落差があると指摘。県警は関係者から聞き取りするとともに、少年から詳しく事情を聴いて2人の関係性や動機の解明を進めている。
事件は5日午後4時50分ごろ発生。少年宅を訪れた男子生徒が玄関先で血を流して倒れている本郷さんを発見し、近くに住む男性(79)が119番した。本郷さんは腹や頭に複数の傷があり、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は胸部の刺し傷による出血性ショックだった。
警察官が現場に駆け付けた際、少年は近くにおり、当初は「(本郷さんが)自殺した」と説明。所沢署で話を聞くと刺したことを認めた。県警は殺人未遂容疑で少年を逮捕し、殺人容疑で送検した。
県警や市教委によると、本郷さんらは少年宅で一緒に定期テストの勉強をするために集まった。少年は動機について「以前に教科書を隠されたことがある」などと供述。「(当日に)聞いたら知らないと言われてけんかになった」「包丁は台所から持ってきた」という趣旨の話をしている。
市教委によると、少年と本郷さんは同じクラスで、卓球部に所属。小学校も同じだった。周囲から見ると仲が良く、いつも一緒にいたという。一方、少年は6月上旬、本郷さんとのことで「20回ほどつねられた」と担任に相談し、「(本郷さんには)言わないでほしい」と頼んだ。さらに2日後、担任が確認したところ、少年は「もうやらないと言われたので大丈夫。仲良くなってきた」と説明。学校は見守り活動を続けていた。
元家裁調査官で少年非行に詳しい立正大の村尾泰弘教授(臨床心理学)は、「教科書を隠されたり、つねられて人を刺すというのはあまり聞いたことがない。刺す行為との間に落差を感じる」と指摘。「相手にきちんと自己主張ができていたのか。表現能力や社会性に未熟さがあり、一気に刃物で刺す行動に出たのではないか」と考える。その上で「非行性や猟奇性はみられない。人を刺すところまで追い詰められていたのかどうか。そこの落差を解明するのが一つのポイント」と話した。
市教委は少年と本郷さんの関係や行為について第三者委員会を設置して調査する方針。県警は引き続き少年が事件に至った背景を慎重に調べている。