埼玉新聞

 

埼玉で注文殺到“溶けないアイス”ギャルが名物女将になり大ヒットさせる 老舗店V字回復、大量注文の日々

  • 大ヒット商品の「葛きゃんでぃ」を手にする「五穀祭菓をかの」6代目女将の榊萌美さん

    大ヒット商品の「葛きゃんでぃ」を手にする「五穀祭菓をかの」6代目女将の榊萌美さん

  • 【地図】桶川市(背景白)

    老舗和菓子店「五穀祭菓をかの」がある桶川市

  • 大ヒット商品の「葛きゃんでぃ」を手にする「五穀祭菓をかの」6代目女将の榊萌美さん
  • 【地図】桶川市(背景白)

 桶川駅東口の商店街にある老舗和菓子店「五穀祭菓をかの」の6代目榊萌美さん(28)は新時代の名物女将(おかみ)だ。創業135年の家業を継いだのは20歳の時。自ら考案した溶けないアイス「葛きゃんでぃ」がテレビ番組で取り上げられ「元ギャルの女将が赤字続きの経営をV字回復」と話題になった。「賛否両論あると思うけれど、キャッチコピーがあったから知ってもらえた。確かにどう見てもギャルですしね」

 「人の役に立ちたい」と教師を目指して大学に入ったものの理想と現実の違いに悩んだ。分岐点は友人の母親からの「中学の卒業式でお店継ぐって宣言してたよね。楽しみにしてるよ」という言葉だった。かつての自分を思い出した。「そうだ、私ってお店が大好きだったんだ。この商店街の人たちが大好きだったんだ」。人の役に立つという目的は変わらない、手段が変わるだけと気付いた。その後、大学を中退しアパレル会社に就職。あえて同業を選ばす、ギャル系の店舗で接客を学んだ。「ギャルの人たちが優しく接してくれたおかげで社会人になれた」

 2016年「をかの」に入社。しかし当時の経営状況は厳しく、榊さん自身も何をすればよいか分からず店頭に立ち続けた。そんな中、子どもの頃に好きだった「ゼリーを凍らせる」食べ方から発想し、くず粉を使った「葛きゃんでぃ」を誕生させ、ヒット商品に。日に2500件もの大量注文が入り、対応できずにミスが起きたことも。長年勤めた職人が離れたり、心ない中傷も浴びた。それでも問屋さんから「よく作ってくれた」とお礼を言われたり、同業他社から「うちも作っていいですか」と言われたことが励みになった。「誰かを幸せにできている」と実感した。

 桶川生まれの桶川育ち。心身が疲れると荒川の土手に行く。草の香りをかぎ、鳥が羽ばたく音を聞く。「この時間がいい。地元が好き。そんな感性が自分にあることが財産だと思う」。地元を盛り上げたいという気持ちが年々高まっている。「パワーアップしなきゃ」と笑顔が輝いた。

※「榊萌美さん」の「榊」は、木へんに「神」

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