闇バイト後悔 遊んで金ない男、空腹で応募…報酬なし 指示役に相談やウソ報告 悲鳴響くもやめず懲役11年
各地で相次ぐ住宅強盗事件で、実行犯は主に交流サイト(SNS)を通じて犯罪組織に加わっているとされる。“闇バイト”としてSNS上で高収入などをうたい、実行役を募集する投稿も多い。2月、強盗致傷などの罪に問われ、懲役11年の判決を受けた男(29)=2月22日付、控訴=の裁判員裁判がさいたま地裁で開かれた。公判で浮かび上がったのは、応募者の弱みを握って「殺してでも取れ」と命じる犯行グループの卑劣な手口。何度も犯行に手を染めてしまった男は「後悔している」と振り返った。
起訴状などによると、男は2019年11~12月、埼玉県秩父市や群馬県高崎市などで強盗致傷や住居侵入など8件の事件を起こした。うち5件は指示役から指示を受けた「案件」と呼ばれるもので、3件は自発的に行ったものだった。
19年11月8日ごろ、指示役から秩父市の住宅で強盗を行うよう指示受け、実行役の男3人に伝達。実行役と指示役の仲介者として犯行に関わった。同27~28日、高崎市でも見張り役などで強盗事件に関与。実行役の男らは家人の夫婦を複数回殴打するなどし、2~3週間のけがを負わせた。いずれの事件も金品を奪えず逃走した。
被告人質問で犯行グループに入った理由を問われた男は「当時、食べ物も買えないぐらい困窮していて、金のために入った」と説明。給料のほとんどをパチンコやネットカジノにつぎ込み、電気やガスは止まった。ギャンブルで取り戻そうとしたが失敗し、勤務先の社長や父親、同僚、消費者金融などから1千万円弱の金を借りた。
男は短文投稿サイト「ツイッター」で犯行グループと接触。その後、一定時間経過すると自動でメッセージが消去される通信アプリ「テレグラム」で連絡を取った。闇バイト参加時、グループに「名前、住所、親の名前、免許証を手に持った自撮り写真」などを送った。弱みを握られる危惧は「あった」ものの、簡単に金が手に入ると考えたという。しかし、案件は成功せず、報酬は得られなかった。
男は当初、実行役として強盗事件に加担していた。指示役から「縛って金を取ってこい。最悪、殺してでも取れ」と命令されたが、アポ電強盗だと気付いてやめ、「庭が大きくてバーベキューをしていた」と指示役にうそをついて逃れた。その後、「実行役以外で稼げる仕事はないか」と指示役に相談し、実行役を募集する勧誘役や現場の見張り役を紹介された。
別の現場で見張り役として強盗事件に関与し高齢女性の悲鳴を聞いた男は「自分の祖母に照らし合わせて、嫌な気持ちになった」と振り返った。しかし、その後も闇バイトから手を引くことはなく、複数の事件に関わった。「やめるタイミングはあった。後悔している」
判決でさいたま地裁の佐々木一夫裁判長は「極めて危険で悪質な犯行。一連の犯行に加担した被告人は厳しい非難に値する」とし、刑事責任は重いと判断した。