埼玉新聞

 

<高校野球>天国の女子マネ、八潮南高野球部員らと最後まで戦う 遺影と一緒に応援する母「どうしても」

  • スタンドで応援する八潮南のマネジャーだった児玉由惟さんの母千穂さん(中央)=21日、上尾市民球場

 (埼玉大会=21日・上尾市民)

 八潮南高校野球部の女子マネジャーだった児玉由惟さん=当時(16)=は2年前、通学途中に交通事故で亡くなった。八潮南は21日、上尾市民球場の4回戦で所沢商と対戦し、由惟さんの母千穂さん(46)もスタンドから声援を送った。

 試合は3―8で敗れたが、由惟さんと同級生だった3年生の部員たちは、由惟さんの分まで最後の夏を全力で戦い抜いた。

 もともとプロ野球が好きだったという由惟さん。高校入学後、初めはバドミントン部に入ろうとしていたが、由惟さんが野球好きだということを知った野球部員たちからマネジャーに誘われ、悩んだ末、野球部への入部を決めた。

 「野球のルールやスコアの付け方を勉強したり、苦手だった朝も自分で早く起きるようになった」。由惟さんの努力を傍らで見守っていた千穂さんが、成長を実感していた矢先の事故だった。2017年10月、自転車で自宅から部活のため学校に向かっていた途中、八潮市内で事故に遭い由惟さんは命を落とした。

 昨年は観戦に訪れることができなかった千穂さんだが、「夏の大会が大事だということは分かっていたから、最後の夏は娘をどうしても連れて来たかった」。由惟さんの遺影と一緒に同級生たちの雄姿をスタンドから見守った。

 選手たちも由惟さんから力をもらった。ベンチには由惟さんが着ていたTシャツを掲げ、形見のハンドタオルをお守り代わりにポケットに忍ばせて試合に臨んだ。

 加藤大晟主将(3年)は「生きていたら、今日ベンチに入ってもらっていたはず。『児玉のために』とチーム一丸で戦ってきた」。二回から登板した八重森博斗投手(3年)は、「児玉のために」と書かれた帽子を力に投げ抜いた。「毎イニングの投球練習の時に見て力をもらっていた」

 チームは3回戦の豊岡戦でサヨナラ勝ちを果たすなど勢いに乗っていた。この日も劣勢の中で中盤、終盤に得点し、追い上げる展開。「由惟は野球部をちゃんと見てくれているんだと思った。本当に野球が好きだったから」と千穂さん。最後の夏、由惟さんは大切な仲間たちと共に戦い抜いた。

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