市川越は三回までに瀬良の2ランなど3得点。3－2の七回は高橋の適時打など2点を追加した。浦和実は八回に2点を返したが、及ばず。

　5安打で5得点。Dシード市川越がAシード浦和実の11安打を大幅に下回る安打数にもかかわらず、1点上回った。「打てなくても、やりようはある。勝つにしても、負けるにしても1点差だと思っていた」。予想を良い方に的中させた新井監督は、疲れ切った表情ながら充実感を漂わせた。

　六回終了後のグラウンド整備を3－0で迎えた市川越。終盤にめまぐるしく試合が動き、浦和実に猛追を浴びたが、結局は六回までにわずか2安打で奪った序盤の3点がものをいった。

　浦和実は4回戦で浦和学院を2安打完封した豆田ではなく、エース三田が先発。二回に捕逸で先制に成功すると、三回には1死二塁で、4番瀬良が「真っすぐを狙っていた」と右翼席へ放り込む2ラン。四回から疲労の残る豆田を引きずり出したことが大きかった。

　それを物語っていたのが3－0の七回無死一、三塁のピンチの場面。浦和実は豆田に代打を送り勝負に出た。スクイズで1点。さらに二つ目のスクイズを許したが「2点は覚悟していた。豆田を交代させてくれたのは助かった」と新井監督。

　失った2点よりも、浦和実の主力投手2人をベンチに下げさせたことに意味があった。その裏の攻撃で3、4番手から2点を奪い再び突き放した。

　七回は同点を許さなかったエース左腕和田の冷静さも光る。1点差に迫られ、なお1死一、二塁で「落ち着いて自分の間を取っていたら、二塁走者が走り出した」とけん制球で二、三塁間で走者を挟みタッチアウト。次打者に二塁打を打たれていただけに、勝敗を左右した好プレーだ。

　隙を見せずに、逆に相手の隙を突く心憎い勝ち方。平成元年の甲子園出場校が、令和元年に2度目の甲子園切符をつかむのか。一つのヤマを越え、頂点まであと3勝だ。