築100年、営業に幕 埼玉りそな川越支店、川越駅西口近くに移転へ 人気観光地の一角、建物は今後も保全
埼玉りそな銀行は7月31日、川越市の観光地で蔵造りの建築物が連なる「一番街通り」沿いにある川越支店を、来年7月に移転すると発表した。
店舗は国の登録有形文化財の建物だが、築100年で老朽化し、修繕費用がかさむのが理由。建物は保全しながら有効活用する。移転先は川越駅西口近くを予定する。
店舗は人気観光地の一角で周辺には土産店なども多い。近隣からは修繕への理解を示す声がある一方、移転に対する懸念の声も上がっている。
川越支店の前身は1878(明治11)年5月に県内初の国立銀行として設立された第八十五国立銀行。その後、改組や合併を経て、2003年に現在の川越支店となった。
現在の店舗は1918(大正7)年に建築。東京駅や日本銀行などを手掛けた建築家辰野金吾に師事した保岡勝也が設計したことで知られる。
建物の外観は、当時の流行だったネオルネサンス様式を取り入れ、正面角部に塔屋を設けるなど古典と洋風の折衷様式でまとめた大正ロマン風。現存する早期の鉄筋コンクリート造り3階建ての建築物として貴重で、96年には県内初の国登録有形文化財に指定され、市民や観光客から親しまれている。
近隣の住民や土産店の店員など1日に200人以上が来店する店舗だが、老朽化が進行。今後も銀行として使用するには継続的な修繕が必要なため、支店の移転を決めた。
現金自動預払機(ATM)は、継続する方向で検討する。出張所のような機能は残さない方針で、隣接する駐車場の存続については未定という。
川越支店から市役所と川越商工会議所は徒歩圏内にあるが、川合善明市長と立原雅夫会頭にはすでに説明したという。支店の主要取引先にも移転の説明を始めた。
移転先は再開発で川越駅西口と直結する予定で、東武ホテルの進出が決まった複合商業施設内。2階と4階を賃貸する。同駅近くにある川越南支店を集約し「支店内支店」として再出発する。川越支店から約1キロにある本川越駅前の本川越支店は、現在地で継続する。
川越支店の建物は引き続き埼玉りそなが所有し、保全に努める。地域の観光資源としても知られており、「川越支店の建物は、地域のシンボルとして有効活用していきたい」として、市や地域住民の意見も参考に活用方法を検討する。