地方政治だからこそ 未来を見据えた選択を 埼玉新聞社編集局長・砂生敏一
4年に1度の統一地方選が埼玉県でも始まる。今回の選挙戦は「コロナ後」という初めての状況下で社会経済活動が手探りにあることに加え、かつてない物価高騰下で迎える。候補者には、まずは住民の生活不安に真摯(しんし)に向き合い、地方政治だからこそやらなければならないこと、地方政治だからこそできる実効性のある政策をしっかり訴えてほしい。
埼玉県は、雇用の場一つを取っても首都・東京に隣接していることが時に強みになり、時に弱みにもなる。東京都と合わせ鏡のような本県だけに、実感に乏しいかもしれないが、確実に人口は減少していく。必然的に人口減や少子化対策が論戦の主要点になるだろう。
ただ、埼玉県は市が全国最多の40市ある。町村は23あり、全63市町村それぞれの自治体の課題が色濃く出る。いわゆる「団塊の世代」の全世代が後期高齢者となる「2025年問題」に伴う介護や医療体制の整備は共通としても、保育園になかなか入れない県南部もあれば、少子化に伴う小中学校の統廃合が急速に進む地域もある。病院がなく地元で出産ができなかったり、雇用の場が少ない自治体もある。タワーマンションが林立するエリアもあれば、数戸しかない限界集落もある。住民の自治の姿は一筋縄ではいかず、自治体に求められるニーズも多種多様になる。
埼玉県では県議選、さいたま市議選が4月9日、2市1町の首長選、20市議選、12町議選は23日に投開票される。地域の喫緊の課題にどのように素早く対応し、中長期的難題に道筋をつけ、さらには将来像を展望していくのか。私たちの日々の生活や暮らしに身近で、地方政治の最前線に立つ議員、首長を選択する重要な選挙である。
地方自治は有権者が首長と議員を選ぶ「二元代表制」で成り立つ。強い権限を持つ首長の政策や行政としての仕事が地域にとって有益か、適切かどうか、監視して評価するのが議会だ。コロナ禍では、ワクチン接種だけでも自治体の対応にばらつきがあったことを忘れてはなるまい。地域を住みやすく暮らしやすくするのも住民(有権者)自身である。地域の近未来を見据え、将来世代に責任を持つために大切な1票を無駄にしてはならない。