知っているけれど…「ハードル高い」自転車ヘルメット努力義務化 購入検討、危険実感し着用始めた人も
改正道交法が1日施行され、全年齢で自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務化された。自転車の死亡事故の多くが頭部に致命傷を負っており、ヘルメットの利用により死亡事故を減らすことが狙い。しかし、着用は努力義務のため未着用でも罰則はない。「暑そう」「恥ずかしい」。自転車利用者からは否定的な意見の一方、義務化を機に購入を検討しているという声も。埼玉県警は「命を守るため着用してほしい」と呼びかけている。
■「暑そう」「恥ずかしい」
「ヘルメットはハードルが高い」。自転車乗用中のさいたま市浦和区の女性(37)はヘルメットの着用をためらう。踏み切れない理由として「スポーツタイプの自転車ならいいけどママチャリだし、見た目も気にする」ことを挙げ、「夏は暑そう」とこぼした。
同市南区の30代女性は「ほかにかぶっている人もあまりいないし、ちょっと恥ずかしい。周りの人がかぶったら私もかぶるかも」。2人はヘルメット着用の努力義務化について「知っている」と答えた。
一方、ヘルメットを着用はしていないものの購入を検討している人もいる。公務員男性(28)は「事故に遭った時、頭にけがを負いやすいと聞いたので、なるべく着けて安全に気を付けたい」。
別の30代公務員男性は義務化される前からヘルメットを着用している。「左折するトラックに巻き込まれそうになって、怖い思いをした」ことがきっかけで着用するようになり、「安全につながるので着用はどんどん進めた方がいい」と歓迎した。
県警交通総務課によると、昨年、県内で発生した自転車乗車中の交通事故死傷者数は4707人。死者は16人で、このうち11人は頭部に致命傷を負い、いずれもヘルメットは未着用だったという。また、4707人のうち、ヘルメットを着用していた人は299人(6・4%)だった。
改正道交法の施行に向けて、県警はキャンペーンなどで周知を図ってきた。浦和署は3月31日、JR浦和駅東口でキャンペーンを実施し、啓発品やチラシを配布。自転車利用者にヘルメットの着用を呼びかけた。
同署の畠山長誠交通課長は「自転車事故死者の約7割が頭に致命傷を負っているというデータもある。ヘルメットで自身の身を守っていただきたい」と力を込める。
県警交通総務課の中村聡課長補佐は野球のバッターを引き合いにヘルメットの着用を促す。「バッターも必ずデッドボールをもらうわけではないが、ヘルメットをかぶる。自転車利用者も、絶対に事故に遭うわけではないが、万が一に備えてヘルメットをかぶってほしい」と訴えた。