埼玉初の“結婚式”眼科医と出版社員の同性カップルが誓い 川越の最明寺で 今後も複数カップルが予約
人を愛する心に性別は関係ない―。川越市小ケ谷の最明寺で6日、男性同士の外国人カップルが結婚式を行った。寺によると、仏教寺院で性的少数者(LGBTQ)が挙式するのは県内で初めてという。最明寺は2021年にオンラインで開催した性的少数者による成人式の会場となるなど、仏教の教えに基づいた多様性を尊重する社会を目指して、交流や活動が行われてきた。日本では同性婚法制化の議論が進まないが、川越から寛容な世界の実現を見据える。
結婚式を挙げたのは、ともにイスラエル人男性で、出版社に勤めるライス・ヨアブさん(58)と眼科医のヨラム・メイロンさん(68)。2人は30年前から、パートナーとして暮らしている。ユダヤ教では同性愛がタブー視され、イスラエル国内では同性婚が法的に認められていない。だが、同性婚が法制化された国で結婚し、帰国した場合には婚姻関係が認定されることから、2人は14年に米国のニューヨークで挙式。この日は2度目となる式に臨んだ。
紋付きはかま姿の2人は、寺の副住職千田明寛さん(35)に先導され、本堂に入場。読経に続いて性的少数者の象徴であるレインボーカラーの数珠が授与されると、2人で宣誓文を読み上げた。
2人は親日家で、今回が7度目の来日だという。2年前、日本の英字新聞のウェブ版で最明寺の取り組みを紹介した記事を見つけ、新型コロナウイルス感染拡大による入国制限が緩和されるのを待って夢をかなえた。メイロンさんは「文化や人が大好きな日本で結婚式をできてうれしい。私たちはユダヤ教徒だが、日本人にとって神聖な場所で挙げたかったので、仏教寺院での式を選んだ」と喜ぶ。
日本では自治体のパートナーシップ制度導入が進む一方、法的には同性婚が許されていない。ヨアブさんは「私たち性的少数者とほかの人々は何が違うのでしょうか。みんなと同じで、何も変わらない」と語り、人を愛する心は普遍的なものだと訴えた。
川越市は20年5月から、性的少数者のパートナーシップ宣誓制度を施行した。最明寺もこれに合わせ、性的指向を問わない仏前結婚式「LGBTQ WEDDING」の受け付けを開始。コロナ禍の影響で中止されるなどしたため、3年近くたってようやく第1号が行われたという。
6月には中国の香港、8月にはタイのいずれも女性同士の結婚式が開かれる。ただ、日本人の式は予定にない。千田さんは「多様性のある社会を実現するため、どんな人にも寄り添う仏教の精神を生かそうと考えた。新しい形の提案を通して、日本でも同性婚が法的に認められるようになれば」と願っている。