上尾市職員ら、圧力と証言 元市長と前議長の要求に「特別な配慮」 私有地の公費工事で調査委が報告書
上尾市は23日、新井弘治元市長が所有する土地のブロック塀などを全額公費で撤去・新設した問題で、調査報告書を市議会全員協議会に提出、調査内容を説明した。調査報告書によると、地権者の新井元市長と小林守利前議長からの要求に対して市職員らは圧力を感じたと証言し、「両者に対する特別な配慮によって、公務員として下すべき合理的判断がゆがめられた」と指摘した。
■元市長、任意の聞き取り調査に応じず
市の調査委員会は7月10日~8月22日まで、弁護士の協力の下、畠山稔市長、松沢純一副市長、小林議員、当時の都市整備部長、道路課長ら関係者17人に対し、計33回の聞き取り調査を行った。新井元市長は任意の聞き取り調査に応じなかった。
畠山稔市長は全員協議会で、「調査報告書では今回の件は違法・無効とある。弁護士が監修したものだが、経緯から見ると今の段階ではそのように考えられてもしょうがないと思う」と述べた。
調査報告書によると、上尾市は2018年、地権者と小林議員(当時議長)の要請により、ブロック塀とフェンスを撤去・新設し工事代金として693万3600円を支出した。市都市整備部道路課が、工事の発注を100万円未満の7本に分割したのは、総務部契約検査課の完了検査を回避し、公にしないためだった。小林議員の長男が社長を務める建設会社「美創建業」が全ての工事を受注。その際、他3社の見積書の金額も「美創建業」が記入した。
聞き取り調査では、「小林議員から関与があった」「地権者は市長の時、怖かった。圧力を感じた」などの証言が得られ、「市幹部職員は市長経験者や市議会議員の要求に対し、優先的に応えなければという特別の配慮があった」としている。
また調査報告書では工事が法令違反であり、無効とした上で、市職員が職責を果たさなかったことやコンプライアンス(法令順守)に対する意識の欠如があったとした。
全員協議会に出席した小林議員は「今回の報告書の作成責任者は誰か」など、調査委員会委員長の石川克美総務部次長に相次いで質問した。
石川総務部次長は「本来ならば競争入札にする案件。特定の業者に発注させる目的から外部に知らされずに道路課内だけで処理ができるように考えた」「幹部職員は市で施工すべきか疑わしいことは認識していた」などと説明した。
小林議員は「私が市に圧力をかけて公にならないように、市に分割発注したと、この文面から取られる。なぜこういう文面になるのか。理解不能。納得するまで調査委員会の人には説明してもらいたい。私の人権と名誉が懸かっている」と強く反論した。
この問題で新井元市長は工事代金全額を市に返還している。市議会は百条委員会を立ち上げ、調査を進めている。