<スポーツのまちづくり3>仏ツールは美しい景色を見る「旅番組」 さいたまも観光PRを
7月27、28日の2日間、フランス本国のツール・ド・フランスを視察してきた。大会を主催するASO(アモリ・スポル・オルガニザシオン)の会長をはじめ、責任者の方々にお目にかかった。ツール・ド・フランスという大会がフランス国内でどう受け止められているのか、生の声に触れたかった。
大会終了後、リヨンにも足を運び、世界最大級の総合イベント会社GLイベンツの重役に会い、マルセイユではプロサッカーチーム、オリンピック・マルセイユ所属の酒井宏樹選手に話を聞いた。
分かったのは、フランスの人はみんなツール・ド・フランスを見ているということ。でも自転車レースにそれほど興味はない。では何を見ているかというと景色。(テレビ中継で)美しい景色を見るのが旅番組のようですごく良いそうだ。
レースも毎年違う街を回り、自治体が多額の協賛金を出す。テレビに映れば大勢の観光客が来る。つまり地域振興にもなっている。
やはり本物を見なければ分からない。今回は直前までフランス人選手が優勝しそうだったが、みんな名前までは知らない。そこまでレースには興味がない。
クリテリウムもそうなっていくといい。さいたまにも盆栽町、氷川神社、埼玉スタジアムなど、いろんな観光スポットがある。それらを自転車レースで巡り、テレビで見た人たちが「さいたまにこんな場所があるんだ」「ここ行ってみたいな」と感じる旅番組のような感覚になっていく。
それこそツール・ド・フランスをさいたまでやる価値の進化なのではないか。
地元の人が知っている場所がテレビに映り、そこでレースをやっているというのが地域密着の肝。箱根駅伝はそんな感じがある。次は戸塚に来るぞ、あるいは談合坂は知ってるから行って応援してみようかと。
みんなが休んでいる時に開催するというタイミングもすごい。ツール・ド・フランスは夏休みが始まる最初の区切りに行われる。だからみんな家にいてテレビを見ている。フランスはオンとオフがしっかりしていて平均3週間とか1カ月の休みを取る。箱根駅伝も正月休みに行われますね。
クリテリウムも休みの時期に、さいたまの魅力をもっと発信できるイベントになれば。いろいろな景色を人々が見て楽しむ要素を盛り込めばパワーアップするはず。形を変えて進化させていくことが大事だ。
■池田純(いけだ・じゅん)
1976年横浜市生まれ。早大卒。住友商事、博報堂を経て2011年、株式会社横浜DeNAベイスターズの初代社長。観客動員数、売り上げ拡大に実績を挙げた。日本プロサッカーリーグアドバイザー、大戸屋ホールディングスなど企業の社外取締役なども務める。