埼玉新聞

 

行田市長選、行田邦子氏が初当選 現職ら退ける 5人の争い20年ぶり 行田氏は国政12年、人脈フル活用へ

  • 初当選を決め、支持者と万歳して喜ぶ行田邦子氏(中央)=23日午後11時10分ごろ、行田市本丸の選挙事務所

    初当選を決め、支持者と万歳して喜ぶ行田邦子氏(中央)=23日午後11時10分ごろ、行田市本丸の選挙事務所

  • 【地図】行田市(背景白)

    市長選が白熱した行田市

  • 初当選を決め、支持者と万歳して喜ぶ行田邦子氏(中央)=23日午後11時10分ごろ、行田市本丸の選挙事務所
  • 【地図】行田市(背景白)

 統一地方選の後半戦は23日、埼玉県内で2市1町の首長選と20市議選、11町議選の投票が行われ、即日開票された。首長選では、現新5氏の激戦となった行田市長選は新人の行田邦子氏(57)が4氏を退け初当選を果たした。現新一騎打ちの北本市長選は、現職の三宮幸雄氏(72)が再選した。現新4人が争った毛呂山町長選は、現職の井上健次氏(64)が3氏を破り4選を果たした。20市議選は総定数469議席に595人、11町議選は総定数146議席に169人が立候補。31市町議選の投票率は前回(41・10%)を下回る39・56%だった。

■行田市長選、市民は市政の刷新を選択

 行田市長選は元参院議員で新人の行田邦子氏(57)が、再選を狙った現職の石井直彦氏(79)、ともに前市議で新人の細谷美恵子氏(62)と高橋弘行氏(80)、前副市長で新人の石川隆美氏(58)を退け、初当選を果たした。無所属現新5人による激戦で、市民は市政の刷新を選択した。

 市長選を5人で争ったのは2003年以来で20年ぶり。人口減少対策、子育て支援策、地域活性化などを争点に舌戦が繰り広げられ、激しい選挙戦が展開された。

 参院議員を2期12年務めた行田氏は支持者からの要望を受けて、今年2月に市長選への出馬を表明。「12年間の国政の経験や人脈を行田市のためにフル活用する。行田市に再び活気を取り戻すことが政治家としての集大成」と訴えた。公約として、3歳未満の保育料無償化や義務教育学校の設置などを掲げていた。

 石井氏、細谷氏、高橋氏、石川氏も奮闘したが、及ばなかった。

■異例の“お家騒動”(以下、4月16日告示日直前の記事)

 任期満了に伴う埼玉県の行田市長選は16日、告示される。立候補を表明しているのは、再選を目指す現職の石井直彦氏(79)、いずれも新人で前副市長の石川隆美氏(58)、市議の細谷美恵子氏(62)、市議の高橋弘行氏(80)、元参院議員の行田邦子氏(57)の5人。保守系の無所属現新5人による激戦が予想され、城下町の令和の“お家騒動”に注目だ。

【県名発祥の地】

 県名発祥の地として知られる行田市。大型古墳9基が集中する埼玉古墳群、十万石の石高を持った忍藩、全国生産の8割を占めた足袋産業など歴史あるまちだ。近年は鉢いっぱいに花を浮かべた「花手水(はなちょうず)」で大きな注目を集めるが、市は人口減少という難題に直面する。

 前回は市議を通算で3期務めた石井氏が、4選を目指していた当時の現職工藤正司氏を破り、初当選。工藤氏は半数以上の市議が応援に回り、各政党や各種団体の推薦も取り付け、有利とみられていた。だが、石井氏は広域ごみ処理施設計画の見直しや給食費無償化、市長給与半減などを公約に掲げ、現状に不満を抱く層を取り込んだ。

【現新5人混戦】

 民間出身の石井氏は1期限りの考えも示していた。任期中には主な公約を実行していたが、新型コロナウイルスの影響も受けたとして、「私がもう1期やる必要がある」と1月に再選出馬を表明した。

 石川氏は市教委生涯学習部次長だった2019年、石井氏の公約で公募した副市長に応募し、副市長に就任。昨年11月で辞職し、「政策実現には副市長では限界を感じた」と同12月に出馬を表明した。

 いずれも市議で石井氏とかつて同じ会派だった細谷氏と高橋氏も「民間活用が思うように進まなかった」と1、2月に相次いで出馬を表明。細谷氏は15年の市議選で初当選し、現在2期目。元県議で自民県連幹事長などを歴任した故鈴木聖二氏の妹でもある。高橋氏は11年の市議選で初当選し、現在3期目。前回の市長選では石井氏を全面的に応援し、同日投開票の市議選ではトップ当選を果たした。

 当初はこの4人の戦いとみられたが、元参院議員の行田氏も「行田に活気を取り戻す」と2月に出馬を表明した。行田氏は07年の参院選埼玉選挙区に旧民主党公認で出馬し、初当選。13年は旧みんなの党公認で再選を果たした。

【荒れる選挙戦】

 今回出馬を予定している5人はいずれも保守系候補だが、さまざまな側面を持つ。市長選で市長と市長を支える立場の副市長が同時に立候補するのは異例で、また女性3人が立候補するのも珍しい。男性2人は同年代で、かつては行動を共にしていたが、後に袂(たもと)を分かった経緯もある。

 市は石井氏が就任するまで、60年にわたって市職員出身者が市長を務めてきた。城下町で保守的な土地柄だが、選挙戦が荒れる時は大いに荒れる。16年前に工藤氏が初当選した時は石井氏を含む4人が立候補し、20年前も5人が出馬した。今回は法定得票数(有効投票総数の4分の1)に届く候補がおらず、再選挙になる可能性も指摘されている。

 一方で、ある陣営の関係者は「市民の中で関心のある人とない人との温度差がかなりある。5人が出るという話を知らない人もいる」と話す。市長選と同時に市議選もあり、ある市議は「誰が当選するか分からず、動きようがない。自分の選挙の方が大切」と静観している。

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