埼玉新聞

 

<大宮刺殺>逮捕の男が暴力、女性が県警に相談 県警から警告され男反省も…被害届け出す直前に凶行

  • 事件のあった現場のビルから引き上げる警察官=23日午後8時5分ごろ、さいたま市大宮区宮町

 さいたま市大宮区宮町のビル5階で23日、女性が男に刺された事件で、大宮署は殺人未遂の疑いで、女性の交際相手で前橋市職員の男(25)=前橋市大渡町1丁目=を現行犯逮捕した。刺された会社員女性(22)=春日部市道口蛭田=は首などを刺され、搬送先の病院で死亡が確認された。県警は男女間のトラブルがあったとみて、容疑を殺人に切り替え詳しい動機や経緯を調べている。

 死亡した春日部市の会社員の女性は男から暴力を振るわれているとして昨年9月から複数回、県警に相談を寄せていた。事件があった23日午後9時ごろに父親と共に春日部署を訪れ、被害届を提出する予定だったが、その約3時間前に職場のあるビルに男が現れ、命を落とした。県警は「本人と家族の意向を踏まえ、状況に応じて対応していた」としている。

 県警人身安全対策課などによると、昨年9月中旬、女性の父親から「娘が暴力を振るわれている」と春日部署に相談があった。同署では女性から聞き取りをした上で、男と両親を呼び出し、口頭で警告。両親には観護依頼、女性には防犯指導を行った。

 県警が「女性に近寄らないように」「連絡を取らないように」などと警告したところ、男は女性の申告内容を認めて反省した様子だったという。同課は「女性に被害届を提出することを薦めたが、出さなかった」としている。

 その後も同署は定期的に女性と連絡を取っていたが、男からの暴力や自宅への押し掛けといった事案はなく、11月には継続していた相談対応を一度終了した。

 しかし12月上旬、女性が同署管内の交番を訪問し、「(男が)家に来ているようだ」と再び相談。事情を聴いたところ、交際が続いていたことが分かった。

 今年1月になってから、再び暴力を振るわれる事案があり、22日に父親から電話で相談があった。翌23日には被害届を出す予定になっていた。

 県警捜査1課によると、女性は殺害される直前、男ともみ合いになり、「助けて」と悲鳴を上げ、複数の者が目撃した。県警は女性と男の交際に起因するトラブルが続いていたとみて、犯行に至る詳しい経緯や動機を調べている。

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