埼玉新聞

 

<熊谷小4ひき逃げ>親だったら許せない思い…事件から10年 時効撤廃に賛同多く、支援も「悔しい思い」

  • 亡くなった息子の遺影を見つめる母親。サッカーが好きな少年だった=2018年9月、熊谷市の自宅

 熊谷市で2009年9月、小学4年の小関孝徳君=当時(10)=が死亡した未解決のひき逃げ事件から、30日で10年が経過する。「何とか犯人を捕まえたい」という母親の思いは、適用罪名の変更という形で第一歩を踏み出し、時効は10年の延長が決定。真実を明らかにするため活動を続けている。

 「もう随分前なのに、まだ犯人が見つかってないんですね」。今月23日、適用罪名の変更が決まってから初めてのビラ配りで、時効撤廃の署名に協力する通行人の姿があった。現場近くに住むという男性(65)は「子育てを経験した者として、親だったら許せないと思う」と署名に応じた。

 事件が発生したのは09年9月30日午後6時50分ごろ。孝徳君は書道教室から自転車で帰宅している途中に事故に遭った。

 事件は16年に道交法違反(ひき逃げ)罪の時効が成立。自動車運転過失致死罪(当時)の時効も今年9月末に迫っていた中、母親は情報発信・収集のためブログを開設。民間の事故調査会社に証拠品の鑑定を依頼するなどして、10年目で初めて明らかになった事実もあった。時効まで数カ月を切った頃には、慣れないパソコンを使いながら嘆願書を作成。法務省への時効撤廃、警察庁への危険運転致死罪への罪名変更を訴えてきた。

 未解決のまま、時効目前となった今月18日、県警が適用罪名を変更して捜査を継続することを明らかにした。母の行動とその思いに賛同する多くの人たちの思いがつないだ結果だった。

 孝徳君が通っていた小学校の当時の校長・浅見信行さん(62)は、母親に「お母さんの気持ちが伝わったんですね」と連絡し、彼岸には孝徳君の仏前に手を合わせた。「また情報提供を呼び掛ける機会が増える。力になりたい」と話す。

 孝徳君と同じサッカーチームだった関根豊さん(19)は事件当時、できることが少なく悔しい思いをしたという。「単に期間が延びただけでは逮捕につながらない。また振り返ったときに悔いがないよう、今だからできることを考えたい」。変わらず事件解決を願っている。

 同級生の母親も「延長されたから捕まるという保証もなく、逮捕時に過失運転と判断されたら、罰することができない。だから時効撤廃が必要」と力を込める。罪名変更はあくまで第一歩だ。母親は「ひき逃げ、過失運転、危険運転とそれぞれに時効が必要か、現在の制度は適切か一つ一つ議論して検討してほしい」と訴えている。

 時効延長が決まった後、母親のブログ名からは《時効まであとわずか》の文字が消えた。解決を願い続けて活動し、周囲にも支えられた10年間。「同級生の保護者も変わらず寄り添ってくれる。10年たってしまったが活動を続けたい」。捜査継続という形で迎えた11年目、真摯(しんし)な捜査が尽くされることが求められている。

 ブログは「《未解決》熊谷市小4男児ひき逃げ事故!」。

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