埼玉新聞

 

年商ゼロ→10億円超に…生ラーメン一筋「どこにも負けない」 商品の一本化で起死回生 製麺会社の埼玉物産

  • 埼玉物産の生ラーメンの製造ライン。加藤社長が「麺にとって湿度は敵」と話す通り、工場内はドライな環境を保っている(埼玉物産提供)

    埼玉物産の生ラーメンの製造ライン。加藤社長が「麺にとって湿度は敵」と話す通り、工場内はドライな環境を保っている(埼玉物産提供)

  • コラボ商品第2弾の「鰹と昆布のだし香るざる中華」

    コラボ商品第2弾の「鰹と昆布のだし香るざる中華」

  • 埼玉物産の生ラーメンの製造ライン。加藤社長が「麺にとって湿度は敵」と話す通り、工場内はドライな環境を保っている(埼玉物産提供)
  • コラボ商品第2弾の「鰹と昆布のだし香るざる中華」

 埼玉県ふじみ野市の製麺会社埼玉物産(加藤康太社長)は、大手製麺会社の100%下請けから独立経営に転じて8年。年間7億円あった売り上げが独立時はゼロになったが、現在は10億円を超えるまでに復活した。立て直しの鍵になったのは、長い経験で培った麺作りのノウハウと商品を生ラーメン一本に絞り込む特化戦略だった。

■逆境

 1912年創業の埼玉物産はうどん、そばを中心に製造し、88年に大手製麺会社の傘下に入った。原料の調達から配合、生産量まで決められ、商品は全て納めた。2015年度の売り上げは7億円余。加藤社長の父親で前社長の藤雄氏は「(取引会社との)パイプをしっかりつないでおけば会社は永年続く」と話していた。

 しかし14年、その関係は一変する。大手製麺会社が生産拠点の再編を打ち出し、会社の売却を求めてきた。売らなければ取引は停止。藤雄氏は「おまえが決めなさい」と加藤社長(当時は専務)に託した。自社の製麺技術に自信があった加藤社長は「会社を売らなくても取引を続けられるのでは」と交渉したが、結果は製造委託契約解除。16年度は大手の元を離れ、ゼロからのスタートとなった。

■雌伏

 手間暇かけた麺作りは武器になると確信していたが、100%下請けだったため自社商品がない。営業や開発担当の社員もおらず、加藤社長が1人で営業に回った。スーパーに売り込みに行っても会社に知名度がないため、大手が幅を利かせた売り場に入り込むのは至難の業だった。

 ただ大手の下請けだった実績と当時取得したFSSC22000(食品安全システム認証)のおかげで、スーパー数社からプライベート・ブランド(PB)商品の製造を受注することができた。何とか売り上げを伸ばしたが、同時に赤字も増えていった。

■勝負

 資金も底を尽きかけた20年3月、加藤社長は生うどん、生そばをやめ、生ラーメン一本に絞る決断に踏み切る。スーパーではうどん、そばの売り場が縮小される一方、ラーメンは伸びていたし、自社工場でもラーメンの製造ラインはフル稼働していた。「埼玉物産はうどんもそばも焼きそばもない。でも生ラーメンはどこにも負けない」。生ラーメン一筋の製麺会社ということも宣伝材料にした。

 商品コンセプトは「お店の味をご家庭で」。原料の小麦にこだわり、10以上の銘柄から選んでブレンドする。室温と湿度を考慮し、粉の温度と水分量を微妙に調整するノウハウは長い歴史の中から学んだ。味を追求するため保存料も最小限に抑えている。

 味の評価が高まり、業績も順調に回復。今年3月期の決算で初めて売り上げ10億円を達成した。昨年11月から冷凍ギョーザの無人販売店でラーメンの販売を始めるなど新機軸にも挑戦。加藤社長は「ブランドも浸透してきたし、次は大手と同じ土俵で戦ってみたい」と意気込んでいる。

■鰹節専門店とコラボ

 埼玉物産は、鰹(かつお)節専門店「にんべん」とのコラボ商品第2弾となる「鰹と昆布のだし香るざる中華」を発売した。

 にんべんとのコラボは「ラーメンはスープが主役。麺はスープのおいしさを伝えるための脇役」という加藤康太社長の考えから実現。ラーメンに欠かせない油やラードは一切加えず、鰹と昆布のうまみを存分に味わえるよう麺は北海道産小麦ゆめちからの中心部分だけを使っている。

 1パック2人前(麺、スープ、かつお削り付き)、税込み410円。コラボ商品第1弾の「鰹と昆布のだし香る中華そば」も販売中。

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