埼玉新聞

 

<台風19号>さいたま床上浸水、県内で最も多く 桜区の床上浸水、市全体の約8割 次いで中央区も多く

  • 障害者支援施設「しびらき」では浸水でベッドやパソコン、ピアノなどを廃棄せざるを得なくなった=21日午後、さいたま市桜区

  • 床上浸水で水に漬かった家具を片付ける住民=21日午後、さいたま市桜区

 台風19号による大雨により、さいたま市内では県内で最も多い871件の床上浸水、292件の床下浸水の被害が出た(28日正午現在)。中でも桜区では床上浸水が市全体の約8割になる689件、床下浸水が7割超となる210件に及んだ。

 市では「想定以上の雨が降って各河川に流れ、排水処理し切れず行き場を失った水が特定の地域にたまったのでは」と分析している。

 市内を流れる鴨川近くの桜区新開2丁目に住む80代女性は自宅が床上浸水となった。結婚を機に戸田市から引っ越し、約50年前に木造2階建ての自宅を建てた。

 台風の水の勢いは想像以上で、「車庫の軽自動車が水で浮いていた」と近所の人から言われたという。嫁入り道具で持ってきたミシンも水に漬かり、廃棄となった。そのほかにも多くの思い出の品を処分することとなったが、「命が助かっただけでもありがたく思わなければ」と前を向く。

 新開3丁目の障害者支援施設「しびらき」では台風当日に約50人が入所していた。鉄筋3階建ての1階部分はほぼ浸水。エレベーターやボイラーも水に漬かり、再び使えるめどは立っていない。相浦卓也施設長(40)は「1メートル以上の水が押し寄せ、辺りが海みたいになった」と振り返る。

 泥まみれの施設内だったが、ボランティアなどの協力で、消毒や片付けを行い、現在は少しずつ日常を取り戻しつつある。「皆さんの支えに感謝しかない」と相浦さんは頭を下げる。

 桜区に次ぎ、中央区でも床上浸水(56件)と床下浸水(41件)が多かった。

 鴻沼川が近くを流れる中央区大戸2丁目の80代女性は「災難だが自然が相手だからしょうがない」と肩を落とす。台風接近時は蓮田市に住む長女の家へ避難していたが、13日朝に自宅へ戻ると、床上まで浸水していた。今まで床下浸水は何度かあったが、床上までは初めてだという。

 今、最も大変なのは浸水で処分する災害ごみの処理。女性は1人暮らしで、「年も年だし一気に片付けられない」と嘆く。この日も朝から業者が女性宅を訪れ、浸水した壁の修復作業を行っていた。

 市防災課によると、桜区では台風が接近した12日から鴨川や鴻沼川に多くの水が流れ込んだ。

 国土交通省は本流である荒川からの逆流を防ぐために、合流地点にある昭和水門を12日午後10時ごろに閉門。県管理の鴨川排水機場と鴻沼排水機場のポンプを稼働させて鴨川と鴻沼川の水を排水した。

 しかし両河川の水位はさらに上がり、鴨川支流の下流域で水があふれて、新開や桜田地区で浸水被害が多く出たとみられている。

 中央区でも、鴻沼川の水位上昇により、雨水の流れが悪くなり、側溝から水があふれて大戸や鈴谷地区で被害が出たのではないかと分析されてる。

 同課ではいずれも「想定を上回る雨の量だった」としている。

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