1歳で異変…国内10人が患う難病「ローハッド」 難病指定されず高額出費の今、悲願の指定が近付いた可能性
幼児に急激な肥満や低換気などが起きる原因不明の病気「ROHHAD(ローハッド)症候群」について、新たに血清解析による抗体検査が提唱された。広島大学大学院の宇都宮朱里客員教授が日本小児科学会で発表した。ローハッド症候群では、早期に呼吸管理を行うことが重要で、新たな検査により早期診断につながる可能性がある。県内の患者家族が家族会を結成して目指してきた指定難病化には客観的な診断基準が必要となるため、患者の悲願達成に一歩近づきそうだ。
■早期診断に可能性
研究では、一般的な臨床検査でも用いられる「ELISA(エライザ)測定法」と呼ばれる検査により、腫瘍の合併症があるローハッド患者に確認されていた特定の抗体を腫瘍のない患者でも確認した。抗体価40で陽性とすると、ローハッド患者14人中12人が陽性だった。重症患者では800のケースもあり、相関関係が判明すれば重症度を測れる可能性もあるという。
ローハッド症候群は「急性発症肥満」「低換気」「視床下部障害」「自律神経機能不全」が主な症状で、それぞれの頭文字が病名の由来。患者家族らによると、患者には1歳半ごろから便秘や手足の冷え、斜視などの異変が現れ、呼吸機能が低下しやすい睡眠中は酸素投与や人工呼吸器が必要となる場合がある。体内の二酸化炭素濃度が高いと性格が攻撃的になる傾向もある。医療界でも知名度が低く、複数の診療科にまたがることも早期診断の壁となっている。
厚生労働省のホームページなどによると、現在338の病気が指定難病になっている。指定難病の登録に向けては、厚労省の補助金などを受けて病気を研究する研究者のチームから申請を受けて、審議会で議論される。難病は発病のメカニズムが明らかでなく、治療方法が確立していない長期療養が必要な希少疾患と定義されるが、指定難病にはさらに、(1)患者が人口の約0・1%未満(2)客観的な診断基準―という条件がある。
これまでローハッド症候群では複数の症状から総合的に診断が行われてきた。県外の患者の1人は似た症状の別の難病の検査を受け、陰性だったために消去法的にローハッド症候群が疑われた。検査は自己負担で6万円したという。
患者の息子を持ち、2019年に家族会「ローハッド症候群日本事務局」を立ち上げたさいたま市の橋本恩(めぐみ)さんによると、国内の患者は現在10人程度。橋本さんは取材に「早く日常的に受けられる検査になってほしい。症状の進行に早く気付き、早期治療にもつながれば」と期待を寄せた。
事務局ホームページでは、宇都宮客員教授らによる血清解析についての相談を受け付けている。橋本さんは指定難病化のための広報活動などへの支援を呼びかけている。
寄付の振り込み先は口座名「ローハッドショウコウグン ニホンジムキョク」ゆうちょ銀行029店・当座預金0110342。