女性用コンドームなど展示 埼玉初のユースクリニック、ウエルシアで開催 100人来場、若者が性の相談
埼玉県坂戸市の薬局ウエルシア坂戸若葉駅東口店で28日、女子栄養大学の学園祭「若葉祭」に合わせ、専門家が若者の性の相談に乗る「たんぽぽユースクリニック」が開催された。相談対応に当たった埼玉医科大学の産婦人科医、高橋幸子さんによると、県内でのユースクリニック実施は初。「(発祥の地の)スウェーデンでは若者が無料で性に関する受診ができ、保護者の同意は不要。私が多くの学校で性教育を行っている坂戸や川越で、行政主導の常設のユースクリニックを実現したい」と話した。
性教育に取り組む彩の国思春期研究会が主催し、女子栄養大学のサークル「たんぽぽ」など三つの団体が協力した。看護師や薬剤師、保健師、精神保健福祉士らが相談に当たり、性教育に関連した本や、女性用コンドームなどの避妊具、月経カップなどの生理用品の展示について来場者に説明。高橋さんによると、約100人が来場し、そのうち約2割は男性だった。
高橋さんは、来場者に子宮内避妊具(ミレーナ)やスウェーデンから取り寄せた思春期用の避妊具「カイリーナ」について丁寧に説明。坂戸市の学生の女性(23)は「地元でこういう活動があるということを初めて知った。勉強になった」と話した。友人の会社員女性は、高橋さんからアフターピルなど国内外の避妊グッズについての説明を受け「日本でアフターピルはすごく高いと感じる。コンドームも、韓国ではメーク用品みたいでかわいいのに、日本のものはあからさまなデザインで手に取りにくい」と共感を示した。
展示の一つ、子どもの生理用吸水ショーツを開発した愛知県の渋谷木の実さん(41)は「(紹介され)すごくうれしい」と笑顔。中学生の娘のために開発に取り組んだ経緯を振り返り「恥ずかしくて生理のことを親に相談したり学校でナプキンを替えたりできない子もいる。服に血が付いてしまったらさらにショックを受ける」と説明し、「親子で性教育に取り組む新しい入り口になれば」と期待した。
協力団体の一つ、獨協大学(草加市)経済学部のゼミ生で構成する「ユースヘルスまもり隊」はユースクリニックについて研究し、導入を推進している。今年1月に県に政策提言を行い、同日は提言を元にした資料を掲示した。約30年かけて埼玉でユースクリニックを当たり前の存在にする「ワンジェネレーション計画」を提案し、ユースクリニックや包括的性教育が浸透している場合とそうでない場合の人生のモデルを並べて表示。4年の佐藤里歩さんは「パッと見て問題点が分かるようにまとめた」と説明した。
ゼミ生を指導する高安健一教授は「スウェーデンでも30年かかっており、教育には時間がかかる。日本も政策として取り組まなければ性の知識がなく不利益を受ける若者が出続けてしまう」と指摘。「埼玉ではユースクリニックの芽が育っていると感じるが、医療の認可やスペース、専門家の確保などにおいて政策面でのもうひと押しが必要だ」と行政の関与の必要性を強調した。
■ユースクリニック
男女を問わず、20代前半ごろまでの若者が避妊や性感染症などの性に関する悩みや、心の問題を看護師などの専門家に相談する場所。発祥のスウェーデンでは、保護者の同意がなくても受診でき、緊急避妊薬(アフターピル)の処方などを受けられる。