埼玉新聞

 

ノウハウ構築を…医療的ケア児支援「地域センター」埼玉で3カ所増設 「5年で市町村移行」に不安の声も

  • 地域で開催されたイベントに参加する医療的ケア児ら=3月、埼玉県三芳町

    地域で開催されたイベントに参加する医療的ケア児ら=3月、埼玉県三芳町

  • 地域で開催されたイベントに参加する医療的ケア児ら=3月、埼玉県三芳町

 埼玉県は6日、人工呼吸器などのケアを日常的に受ける医療的ケア児を支援する地域センターを3カ所増設すると発表した。地域センターは既存の「かけはし」(川越市)を含めて4カ所となり、県内を東西南北に分けて医療的ケア児や保護者らからの相談を受け付ける。大野元裕知事は同日の記者会見で「本来、医療的ケア児の個別支援は市役所の役目であり、ノウハウ構築により、5年間で市町村の支援体制に移行させたい」との見通しを示した。

 県の医療的ケア児支援センターは、人材育成や支援に関する調整などを担う県直営の県センターと、医療的ケア児支援の実績とノウハウがある社会福祉法人に委託する地域センターの2種類。2021年に施行された医療的ケア児支援法では、都道府県がセンターを設置できると定められており、県は今年1月に県センターとかけはしを設置した。

 県によると、開設以来センターに寄せられた相談は96件。「夜中にたん吸引を受けられないか」との問い合わせに、事業所に確認して情報提供するなどの支援を行ったという。大野知事は「市町村により専門人材や経験に差がある。複数のセンター設置により連携することが必要」と期待した。

 医療的ケア児を育てる親らのNPO「ママケア」(ふじみ野市、三芳町)メンバーの藤川友子さんは「増設は必要だと思う。退院後の医療的ケア児を連れた親が利用できるように各圏域に一つは欲しい」と指摘した。

 日常に感じる困り事として「サービスの利用費用などは出るようになったが、事業所探しなどは親が担う。あちこちに電話をして心が折れることはよくある」と話す。具体的には「通学のための福祉タクシー代が出て、行きに子どもと母親、看護師が乗っても、学校に着いた後は別の客を乗せて去ってしまう。母親らの帰りの方法まで含めて、支援センターがコーディネートしてほしい」とした。

 自身や他のママケアメンバーがセンターに相談したことはないとし、「どんな相談ができるのか、具体的な事例の紹介や案内をしてほしい」と要望。5年後の市町村への移行については「学校卒業後に市外のサービスを利用しており、連携が不安。引き続き、県がリーダーシップを取ってほしい」と話した。

 新設の地域センターは東部が「ともに」(電話048・748・5059)、南部が「カリヨンの杜」(電話048・797・6671)、北部が「たいよう」(電話0493・39・1114)。8日から相談を受け付ける。

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