埼玉新聞

 

埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(10)】山田建具・田中幸治社長、建具屋の技術を後世に

  • 建具の技術を残すため、何ができるかを常に考えていると話す田中幸治社長

    建具の技術を残すため、何ができるかを常に考えていると話す田中幸治社長

  • 建具の技術を残すため、何ができるかを常に考えていると話す田中幸治社長

 県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。

■山田建具(見沼区)田中幸治社長

 さいたま市見沼区の山田建具は1967年の創業以来、ヒノキなどの木材を使った襖(ふすま)や障子、ドアなど、オーダーメードで「一点物」の建具を作っている。田中幸治社長(44)の就任後は、建築と介護事業にも参入している。

 田中社長によると近年では、9割以上の新築家屋で寸法が決まっている安価な量産型の建具が使われ、昔ながらの建具屋は減っている。「会社を残すためにも、ノウハウを生かせることはないかと常にアンテナを張っている」と話す。

 田中社長は会社員を経験し2012年に入社。木製建具の需要低下とともに仕事が年々減少することに危機感を抱き、飛び込み営業を始めた。

 16年には父の後を継いで社長に就任。営業が実を結び売り上げは伸びたものの、少ない人員で営業から納入までを行い利益を伸ばすには限界があった。そこで新築からリフォームまでを一貫して行う建築事業部を20年に新設した。建設全般を請け負うことで、設計の希望を聞く際に自社の建具を紹介し、建具の注文を増やすことにもつながった。

 介護事業部を創設したきっかけとなったのは、長年勤務していた社員が脳梗塞で倒れ、入院したことだ。田中社長は意識が戻ったとしても以前と同じ生活を送るのは難しいと考え、社員や、同じ悩みを持つ人を支援できればとの思いで、介護施設の協力を得て訪問介護や車いすなどの福祉用具のレンタルを始めた。

 田中社長は「介護事業で培った視点で、介護される人にも使いやすい建具を作りたい。何ができるか常に考え、建具屋の技術を後世に残したい」と胸を張った。
 

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