子の意思確認「当初のみ」に さいたま市ファミリーシップ制度で見直し 「もやもや残る」当事者も
埼玉県さいたま市は16日、性的少数者(LGBTなど)のカップルの子どもを家族として公的に認めるファミリーシップ制度の要綱改正案を市議会市民生活委員会に報告した。パートナーの2人に対して、子どもへの意思確認を年1回求める規定を見直し、当初の届け時のみとする。8月1日から実施する方針。当事者家族から「差別的」と指摘を受け、市は見直しを検討していた。
市人権政策・男女共同参画課によると、2020年4月、市は県内で初めてパートナーシップ宣誓制度を導入した。同制度の要綱を改正し、22年11月にファミリーシップ制度を施行。パートナーの2人に対して、子どもの意思確認を当初と毎年1回の届け出時に求めると規定した。他の自治体では同様の規定がなく、当事者家族から「差別的な内容で、改正を検討してほしい」と批判の声が上がった。市議会でも当事者の意見を把握するよう求められていた。
同課は今年2、4月にパートナーシップ宣誓者にアンケートを実施。子どもの意思確認を当初のみとする案について、カップル42組84人に調査用紙を送付。回答した23人のうち74%の17人が「賛成」と答えた。3月に専門家の意見を聴き、「制度の効果は小さいのに、毎年届け出を求めるのは負担が大き過ぎる」と指摘されていた。
同課の担当者は委員会で、「当事者の声を真摯(しんし)に受け止め、こども基本法の理念に基づき、子どもへの説明と子どもの意思の尊重が大切と伝え、届け出は当初のみと見直したい」と述べた。
同課の担当者と意見交換して、制度の改正を求めた同市の野尻真智子さん(57)は取材に「気持ちを寄せて、要綱を変えてくれたことは本当にありがたい」としながら、「当初のみでも確認することに差別を感じる。もやもやは残っている」と話していた。
一方、市は同委員会で、8月1日に越谷、春日部、草加の3市とパートナーシップ宣誓制度の自治体間連携協定を締結する予定と報告した。各自治体間で転居する際に、簡易な手続きで同宣誓を継続することができる。