エホバ信じぬ2世「学校休まないと」…平日に行事 エホバ「強制せず親尊重」 2世「子は親の影響下なのに」
キリスト教系の宗教団体「エホバの証人」が27~29日にさいたま市中央区の県有施設さいたまスーパーアリーナで「地区大会」を開催し、信者の子どもが平日に参加を強制され権利侵害の懸念があるとして、宗教を信仰する親の下で育った「宗教2世」が県に対応を要望している。当事者団体「宗教2世問題ネットワーク」は埼玉県を含め、大会が予定されている全国の自治体と施設宛てに「大会が開催された場合、児童の権利が侵害される」として要望書を送付。県とさいたまスーパーアリーナに対して防止対策を取れなければ、大会を中止するよう求めている。
大会は3日間、午前9時~午後4時ごろに開かれる。同団体代表で関東に住むエホバの証人2世の「団作」さん(20代)によると、大会では講演などで教義を学ぶ。「信者は基本的に全員参加で、子どもは意思にかかわらず長時間の出席を強いられる。特に全日程が平日に当たる埼玉などでは学校を休む必要があり、就学の機会が奪われる」という。
国は昨年12月、信仰と児童虐待に関する質疑応答を示し、「児童の就学や日常生活に支障が出る時間帯まで宗教活動などへの参加を強制するような行為は、養育の観点から不適切なものとしてネグレクトに該当する」とした。
一方、エホバの証人は埼玉新聞の取材に対しメールで「子どもと一緒にどの程度活動に加わるかについて、親の決定を尊重している」と説明。「エホバの証人は子どもの幸せを願い、子どもに聖書の価値基準を教える努力をする。子どもは親と同じ宗教を受け入れるか各自で決定できる」とするホームページを示した上で、「(信者は)子どもに宗教受け入れを強制していない」とした。
さいたまスーパーアリーナを運営、管理する「株式会社さいたまアリーナ」は大会の予定を認め、「利用規定に基づき判断している。それ以前に、主催者が法律に触れることをしないのは当然」と、貸し出しに問題はないとの見方を示した。県有施設を巡っては県営プールの水着撮影会の中止が議論を呼んでおり、大野元裕知事は会見で県有施設全般について「改めて条例や法律に責任が負えるような定款や条件にするよう、今後求めていく」と述べていた。
団作さんは「子どもはそもそも親の影響下にあるのに、さらに信仰のため圧力や制限をかけられている。その結果、子ども時代に楽しいことが何もなく、希死念慮を抱く2世は少なくない」と子ども自身が選択できるとする教団側の主張を否定した。学生時代には剣道などの武道に参加できず、教師への説明も「証言」として自らの口で伝えなければならなかった。「信じていない宗教のために『できない』と言うのは恥ずかしく屈辱的だった。武道がやりたかったかは分からないが、決める権利が欲しかった」と振り返る。
最も苦痛だったのは布教のための戸別訪問。「クラスメートの家が嫌で『行きたくない』と言ったら、母は『貴重な証言の機会だ』と聞き入れなかった。クラスメートは家にいて、『見られた』と思った」。淡々と話すが、「子どもの頃の記憶や感情があまりない。考えないようにしていたのかもしれない」という。
エホバの証人を巡っては、むちでの体罰や輸血拒否などの行為が指摘されている。団作さんは「県有施設で大会が開催されれば、子どもの権利侵害が起きる可能性が高い」と問題提起した。