「団子鼻」ここから西へ…「0系新幹線電車」ゆかりのJR蕨駅、開業130年に 7月、4年ぶり「わらてつまつり」
埼玉県蕨市中央のJR蕨駅は7月、開業から130年を迎える。開業を記念し、さまざまな鉄道の催しが行われる「わらてつまつり」が7月15、16日、駅西口「市立文化ホールくるる」周辺で行われる。実行委員会事務局長の荒井貞夫さん(83)は「10年前に始まった催し。駅の歴史や鉄道に関心を持ち、誰もが楽しんでほしい」と呼びかけている。
JR東日本大宮支社によると蕨駅は今から130年前の1893(明治26)年7月16日に開業した。当時の「日本鉄道会社」第一区線(現在の高崎線)として1883年に上野~熊谷間で営業を開始してから10年後。開業当時は「蕨停車場」と呼ばれた。現在の駅西口階段下にある「蕨駅開設記念碑」には、駅開業に当たり地元有志が記念碑を建立したこと、関東大震災で倒壊しその後、再建されたことなどが記されている。
蕨駅は東海道新幹線開業に合わせ開発された「0系新幹線電車」ゆかりの駅でもある。駅北西約700メートル、蕨市に隣接する川口市芝にはかつて、鉄道車両などを製造する「日本車輌製造東京支店蕨工場」があり、丸みを帯びた先頭部分から「団子鼻」の愛称で親しまれた同電車はここで212両が製造された。
1964(昭和39)年2月、量産型0系新幹線電車は、台車部分を在来線(狭軌)用のものに履き替え、工場の引き込み線から蕨駅の線路へ。平貨車に乗せた新幹線の台車と共に、基地がある神奈川県小田原市の鴨宮駅へと運ばれていった。
工場は72年4月に愛知県豊川市に移転。跡地はその後、芝園団地となった。団地内の歯科医院前には2019年10月、日本車輌OB有志、芝園団地自治会、川口北ロータリークラブ、蕨ロータリークラブの実行委員会により「新幹線電車発祥の地記念碑」が建てられた。碑には「高速鉄道の魁(さきがけ)となって世界に広まった世界最初の新幹線電車が蕨駅から発送されたことからこの地を新幹線電車発祥の地とする」の文言が刻まれた。
蕨工場製の0系新幹線電車は、生まれ故郷の県内に里帰りした車両が現在、さいたま市大宮区の鉄道博物館で展示されている。
「わらてつまつり」は2013年、蕨駅開業120周年を記念して始められ、コロナ禍を経て、今回は4年ぶりの開催。鉄道グッズ販売、「Nゲージ」展示運転会、写真展、保守用車両体験乗車のほか、北陸新幹線などに導入される「E7系」ミニ新幹線試乗会などを予定している。
荒井さんは日本車輌製造で技術者として働き、国立科学博物館産業技術史資料情報センター主任調査委員も務めた。「にぎわいをつくろうと始まった催し。今ではボランティアに高校生や大学生、子ども会も参加してくれます」と話している。