JR大宮駅近くに「フードパントリー大宮」開設 食料品を無償配布、貧困に苦しむ全ての人に
経済格差などから生活困窮世帯の増加が社会問題となる中、企業などから提供を受けた食料品を無償で配布する「フードパントリー」の取り組みが県内で広がっている。20日には、「フードパントリー大宮」が開設された。県内外を問わず貧困に苦しむ全ての人を対象にした県内初の試みで、今後2カ月ごとに開催する。行政の支援も受けながら、新たな貧困対策に取り組む。
フードパントリー大宮はさいたま市大宮区のJR大宮駅西口近くに開設された。県内で女性・母子・貧困問題などを扱っている弁護士や支援団体の関係者らが立ち上げた。代表を務める埼玉弁護士会の竪十萌子弁護士(38)は、女性のドメスティックバイオレンス(DV)や離婚、破産問題などを扱う中で、金銭的に苦しむ相談者が多くいたことから開設を決めた。
「子ども食堂など、県内での子育て支援は進んでいるが、まだまだ全ての貧困者にサービスが行き届いていない。生活保護受給者や、共働きの家族の中にも、お金に苦しんでいる人はいる。"この人にこそ支援が必要"と思った人たちを救いたい」と竪弁護士は話す。
県少子化対策局などによると、県内各地で稼働しているフードパントリーは大宮を含め11カ所で、主に生活に困窮している母子扶養手当受給者が対象。大宮はひとり親家庭に限らず、貧困状態にある単身女性、男性、外国人ら県外問わず受け入れる。母子扶養手当受給者以外の生活者が利用できるフードパントリーは大宮が県内で初となる。
初回の20日は、フードバンク団体「セカンドハーベスト・ジャパン」(東京都台東区)から提供された缶詰や調味料、お菓子などの他、県が提供した災害備蓄品、市民団体と社会福祉協会の代表者らが寄付した食料品が用意された。貧困問題を扱う専門家から招待された約30世帯が、午後5時~8時の間に会場を訪れ、各世帯が買い物籠1個分の食料を持ち帰った。
母子家庭で子ども5人を育てるさいたま市のパート女性(48)は「子どもは年齢が上がるにつれて食べる量が増えるので、とても助かっている」と感謝していた。
生活保護を申請中で、来年2月の受給日まで生活費が続かないというさいたま市のパート女性(38)は「弁護士の紹介で、初めてフードパントリーを知った。ぎりぎりの生活を送っているので、今後も利用したい」と話した。
フードパントリー大宮は、今後も偶数月の20日に同会場で開催予定。竪弁護士は「格差が広がる社会を変えるために、まずは私たちでやれることをやっていく。コメや水、みそなど、日常的に使う物が余っていれば、提供してほしい」と呼び掛けている。
県は見学会の開催やアドバイザーの派遣、開催場所や食材提供者と運営者のマッチング、資金確保の相談などを行うことで、民間のフードパントリー事業を全面的にバックアップしている。
県福祉部の内田貴之企画幹は「フードパントリー活動が、生活困窮者に食材を差し上げる場としてだけでなく、生活困窮者が社会とつながる場、地域コミュニティーの拠点として根付いていくよう、応援していきたい」と話している。
問い合わせは、埼玉中央法律事務所(電話048・645・2026)へ。