埼玉新聞

 

初の国産ジンジャービア、川口の「訳国」が製造着手 生姜の一大産地だった見沼田んぼ、意欲燃やし販売へ

  • 「ジンジャービア」の造り方を紹介する周東孝一社長=さいたま市緑区のさいたま市立美園図書館

  • 「ジンジャービア」の試作品を瓶詰めしている様子(周東社長提供)

 日本ではあまりなじみがない「ジンジャービア」。英国発祥の“ショウガのシャンパン”と呼ばれる発泡性の発酵飲料(酒)だ。しかし、市場で主流のジンジャービアは、無発酵添加物で味を調整した清涼飲料水がほとんど。

 翻訳事業を手掛ける「訳国」(埼玉県川口市)の周東孝一社長(35)は、「さいたま市産のショウガを原料に発酵を経た嗜好(しこう)品としてのジンジャービア」造りに昨年から着手。「国産初のジンジャービアとして県の名産品にしたい」と意欲を燃やす。

■新事業のきっかけ

 台湾華僑の周東社長は大学卒業後、大手酒販会社に勤務し、酒類業界のノウハウを学んだ。台湾留学などを経て、2015年に起業して翻訳事業を行っている。

 3年前、台湾人の妻の実家へ里帰りした時、使い切れず山積みになったショウガを見て、手作りのジンジャービアを造ったところ、家族や近所の間でたちまち評判に。さらに、見沼田んぼが、かつて谷中生姜の一大産地だったことを知り、製造・販売する事業を思い立った。

 昨年5月から準備を始め、8月からクラフトビール醸造所で研究に取り組み、商品の試作を重ねた。バーや飲食店を訪ね歩き、自ら販路も開拓。昨年暮れ、さいたま市で行われたビジネスコンテストでは、革新性があり、自然保全のビジネスモデルと評価され、グランプリを受賞した。

 「飲食店や小売販売のほか、ノンアルコールタイプは、子供や妊婦なども楽しめる。6次産業化が軌道に乗れば、休耕地活用や農業振興にも貢献できるはず」と話す。

■第1号商品が販売

 幻のショウガと呼ばれる見沼産の「三州」を調達し、クラフトビールを醸造・販売する「GROW BREW HOUSE」(川口市)の協力を得て、今月下旬から同店で100リットル限定醸造の第1号商品を販売する予定だ。

 今春からは見沼の農家と連携し、加工に合うショウガの試験栽培も始めるほか、副原料にさいたま市産のゆずなどを使った日本らしい商品の企画も試案。「日本で生まれ育った華僑の自分には日本を客観的に見られる利点がある」と自身のバックボーンや感性も生かしながら戦略を練る。

 来月、新法人「しょうがのむし」を設立予定で、来年をめどに自前の醸造所設立も検討。将来的には台湾や中国への輸出も目指したい考えだ。

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