埼玉新聞

 

選挙を棄権する状況増加 市議選、市長選で過去最低を更新…さいたま市民に埼玉大学が意識調査

  • 埼玉大学が政治・選挙に関する意識調査

 埼玉大学社会調査研究センターがさいたま市民を対象に定例で行っている2019年政治・選挙に関する意識調査の結果がまとまった。19年4月の同市議選後に行った今回と、17年5月の市長選後の調査を比較したところ、18~29歳の若年層の選挙に対する認知度の低下と、80歳以上の高齢者が体調不良(病気など)を理由に選挙を棄権する状況が増加している実態が浮き彫りになった。

■「無関心」増加

 調査は19年6月、市内10区の選挙人名簿から無作為に千人を抽出して実施(郵送方式)、約6割の602人から回答があった。この調査と17年の調査(同方式、回答率65%)を比較した。19年の市議選の投票率は38・16%。17年の市長選は31・44%で、ともに過去最低を更新した。

 国や地方の政治への関心度を問うたところ、「非常にある」と「ある程度ある」の合計が76%(17年)から71%(19年)に低下する一方、「全くない」と「あまりない」の合計は23%(17年)から28%(19年)に増えている。

 投票しなかった人に理由を聞く項目では、80歳以上で「病気などの体調不良」と回答した人が54%(17年)から67%(19年)に増加。18~29歳に目を向けると、「選挙があることを知らなかった」が11%(17年)から20%(19年)に倍増している。

 若年層と80歳以上の投票率の下落幅が広がる傾向について、松本正生センター長は「高齢化の進展を考えると、これからは買い物弱者と同様、投票弱者へのケアが求められる。若者層は投票に行く、行かない以前に、社会の情報に関する認知度の低下の問題が存在する」と指摘する。

■至便性重視へ

 投票しなかった人に、どういう状況ならば投票しようと思うかを聞いたところ、「インターネットや郵送による投票」(48%)が最も多く、「駅やショッピングセンターでの投票」(29%)が続き、17年調査と同様の傾向を示した。「投票所が近かったら」は9%にとどまり、投票環境の整備については、至近性より投票しやすい至便性を求める傾向が強く表れた。

 また19年調査で、新たに「学生時代に経験した選挙に関する授業や行事で印象に残っているもの」を聞いた。「学校での授業」と回答した年代は18~29歳が29%で最高。他の年代は全て10%代だった。18~29歳は「出前授業・模擬投票」と回答した比率も、9%と低かったものの、年代別では最高値を示した。

 松本氏は「18歳選挙権」が導入された16年以降、動きが広がった主権者教育の重要性について触れ、「その実践成果が徐々に浸透していることを示唆している」とみている。

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