捜査怠る…吉川署員2人処分、依願退職 男が窃盗申し出るも捜査せずパトカーで送り届け、その後51件事件
交番に自転車を盗んだと申し出た40代の男=常習累犯窃盗罪などで実刑判決=の捜査を怠ったとして、埼玉県警は8日、吉川署地域課の男性巡査部長(35)を停職3カ月、男性巡査(28)を減給3カ月(10分の1)の懲戒処分にしたと発表した。2人は同日付で依願退職した。男は申告後、県内で窃盗事件など51件を繰り返し県警に逮捕されていた。
県警監察官室によると、巡査部長らは昨年8月8日午前3時ごろ、勤務していた三郷駅前交番で、男が「自転車を盗んできた」と申し出たのに必要な捜査をしなかった。
男は「何日も食べていない」「(千葉県)松戸市にいる姉に会えなかったので、千葉からここまで来た」と話し、逮捕してほしい様子だったという。
巡査部長らは「役場に行けば生活保護を受けられるかもしれない」と、男をパトカーに乗せて松戸市役所新松戸支所近くの公園に送り届けた上、巡査が「何か温かいものでも食べて」と私費から500円を渡した。男が乗ってきた自転車は「市役所が回収してくれるだろう」と、交番付近の路上に移動して放置。自転車は見つかっていない。
男は8月9日から10月にかけて吉川市、三郷市などで窃盗事件など51件を繰り返して、常習累犯窃盗容疑などで県警に逮捕された。男を取り調べる中で巡査部長らの対応が発覚し、内部調査していた。
一般的に自転車盗難事件では、車体番号や防犯登録を確認し、男の名前や住所などを聴取する必要がある。所要の捜査には2~3時間かかるという。巡査部長は「処理に時間が取られると思った。多くの方に迷惑を掛け、申し訳ない」、巡査は「自分も楽をしたいと思った。警察官としてふさわしくない行為だった」と話しているという。
県警の古田土等首席監察官は「厳正な法執行に対する県民の信頼を裏切る行為であり、大変遺憾。職員に対する指導を徹底し、再発防止に努める」とコメントした。