埼玉新聞

 

<医療コラム>関節リウマチ薬と新型コロナウイルス 重症化の可能性、高くなると報告されているのは

  • イラスト・みすとかすみ

 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、医療法人さとう埼玉リウマチクリニックの佐藤理仁医師にリウマチ薬の新型コロナウイルス感染への影響について解説してもらいました。

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 現在、新型コロナウイルスの流行が日本のみならず、世界中に広がっています。特定の持病をお持ちの方は重症化する可能性が指摘されており、ご心配に思われている方も多いかと思います。

 私は埼玉県で関節リウマチの専門クリニックをさせていただいておりますが、免疫を抑える作用のあるお薬を皆さん使われているので、多くのリウマチ患者さまから、ご質問やご不安な声を診察中にいただいております。

 そんな中、2月26日に日本リウマチ学会より関節リウマチや膠原病患者さま向けに、新型コロナウイルスへの対応についてのお知らせもありました。普段私が診察室でリウマチ患者さまより頂く質問や実際の臨床現場での現状も踏まえ、少しでもお役に立てる情報をお届けできれば幸いです。

 診察室でも一番多い質問は、リウマチやリウマチ薬の新型コロナウイルス感染への影響についてです。リウマチ学会からは、

「Q:免疫抑制薬や生物学的製剤を使い続けていても大丈夫ですか?」

「A:現時点では、免疫抑制薬や生物学的製剤などの免疫抑制治療を受けている方が新型コロナウイルスにかかりやすくなるというデータはありません。新型コロナウイルスにかかった場合に、重症化の可能性が高くなると報告されているのは、糖尿病、高血圧、心疾患、脳血管疾患です。一方、免疫抑制治療の減量・中止によってリウマチ性疾患が再燃する恐れがあります」

と患者さま向けに情報提供がされています。

 これは新型コロナウイルスだけではなく、同じ呼吸器ウイルス感染症であるインフルエンザや風邪に関しても、リウマチのお薬が感染リスクを上げなかったと報告されているのと同じかなと思われます。それよりも、「リウマチのお薬をやめてしまう事で、リウマチが急に悪化してしまう事があるので、リウマチのお薬はそのまま続けてくださいね」という事です。

 私の外来でも、残念ながら新型コロナウイルス感染症が心配でお薬を中止されて、膝が急激に腫れて動けなくなってしまった患者さまがいらっしゃいました。

 診察室では、「リウマチのお薬のせいで新型コロナウイルスにかかりやすくなるという報告はありません。リウマチではない皆さんとリスクは一緒なので、リウマチだからと過剰に心配しすぎないでくださいね」「リウマチのお薬も新型コロナウイルス感染症になりやすいという関連はないので、リウマチが悪くならないようにそのまま続けてくださいね」とお伝えさせていただいております。

 また実際に新型コロナウイルス感染症の症状が疑われたときの対応として、リウマチ学会より、

「感染症の症状がある場合は重症になる可能性もありますので、主治医の先生にご相談ください」

と情報提供されております。

 個々で事情が異なるので、主治医の先生に電話などでご相談する事がまず第一になります。

 その上で、私たちのクリニックでの対応をご紹介させていただき、少しでもお役に立てればと思います。

 風邪の症状や37・5度の熱など、新型コロナウイルスの症状が疑われるときの対応を一言でいうと、「感染症が心配な時、ステロイドはそのまま継続、その他のお薬は1週間中止して様子を見る」という事になります。これは新型コロナウイルス感染症に限ったことでなく、他のインフルエンザなどの感染症でも一緒です。

 つまり今使われているリウマチ薬の種類によって対応が分かれるんです。

 もしプレドニン、プレドニゾロンなどのいわゆる副腎皮質ステロイドを使われている方は、たとえ新型コロナウイルス感染症の症状が疑われた時でも、そのままの量の継続をおすすめします。なぜなら副腎皮質ステロイドは急に中止すると、ステロイド離脱症候群と呼ばれるリバウンド症状が出てしまう事があるからです。

 もともと副腎皮質ステロイドは体の中で作られているホルモンの一種ですが、普段から副腎皮質ステロイドのお薬を服用されている方は、体の中で作られる副腎皮質ステロイドの量が減っています。その状態で急に副腎皮質ステロイドのお薬をやめてしまうと、体に必要な副腎皮質ステロイドが不足してしまい、全身倦怠感、血圧低下、微熱、関節痛などが起きます。これをステロイド離脱症候群と呼びます。

 特に落とし穴なのが、新型コロナウイルス感染症を含め、感染症が起きているときは体に大きなストレスがかかります。そんな時、体のバランスを整える為に、実は普段より多くの副腎皮質ステロイドが必要になります。必要な副腎皮質ステロイドの量が増えているのに、ステロイドを急にやめてしまった場合、急激な副腎皮質ステロイド不足が起きてしまいます。すると、副腎クリーゼという意識障害やショック状態といった危険な状態になってしまう事があります。なので、「どんな時も副腎皮質ステロイドは継続」というのがポイントです。

 一方でステロイド以外のリウマチのお薬(メトトレキサート、生物学的製剤、タクロリムス、ケアラム、アザルフィジン、JAK阻害剤など)は、いったん中止しても急にリウマチが悪化したり、ステロイドのようなリバウンドが起きる事はありません。新型コロナウイルス感染症の初期症状か迷ったときは、これらのお薬は1週間のお休みをおすすめしています。1週間中止してみて、症状がすっきり治っていたら再開というのが、現時点でのおすすめかなと考え患者さまにもお伝えさせていただいております。

 なおこれは2020年2月26日時点での情報になります。今後も新たな情報や変更があるかと思いますので、現時点でのご参考にしていただけますと幸いです。

 参考資料1: 日本リウマチ学会 新型コロナウイルス(新型コロナウイルス)への対応について(患者様向け情報)

https://www.ryumachi-jp.com/information/medical/covid-19_2/

◎佐藤理仁(さとう・みちひと)/1981年生まれ。2010年昭和大学医学部大学院卒業。医療法人さとう埼玉リウマチクリニック(戸田市)医師

==埼玉新聞WEB版==

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