<知事選>堅実、時に大胆な県政を 埼玉新聞社編集局長・砂生敏一
主要政党の県組織が相乗りした時点で、勝敗の帰すうが決した今回の知事選。幅広い団体からも支援を受けた大野元裕氏が、盤石と言える戦いで圧勝した。新人2人は明確な対立軸を打ち出せなかった。有権者からみれば、争点に乏しく、選択肢がかなり限られ、選挙戦自体は盛り上がりを欠いた。投票率は過去最低の23・76%で、全国の知事選でも最低記録を更新した。
それでも113万8973票の負託を受けた大野氏には埼玉の将来像を描き、合意を重ねながら県政のかじ取りに当たる責務がある。2期目に向けて掲げた公約は70あり、昨年には県政運営の基盤となる新たな5か年計画も策定した。短期的、中長期な課題にかかわらず、まずは着実な遂行が求められよう。
一貫して増え続けてきた埼玉県の人口が減り始めた。2025年には729万人、30年に718万人となり、40年には685万人まで減少すると予測されている。少子化は深刻で15年以降、7年連続で県内出生数が減少。1人の女性が一生の間に産む子どもの数を示す合計特殊出生率も全国平均を下回っている。さらに高齢化のスピードは急で、既に県民の4人に1人が高齢者、40年には3人に1人になる見通しだ。
デジタル化の進展で時代そのものが大きな変革期にある。次の4年間は、持続可能な埼玉づくりに向けて分岐的となる重要な期間と言える。少子化対策一つを取ってみても、実効性を高めるには女性が仕事と育児を両立しやすい環境づくり、男性の家事や育児に対する意識改革も必要だ。さらには雇用の安定という若年層の経済的な基盤強化も不可欠で、必然的に県だけではなく、国、市町村との連携による複線的な取り組みにならざるを得ない。
埼玉県は全国一の40市、63市町村と自治体の数が多い。国との調整を図りながら、市町村を引っ張り、市町村を支えるのが県の役割。「日本一暮らしやすい埼玉」に向け、リーダーシップとともに大野氏の堅実、時に大胆な県政運営に期待したい。