埼玉新聞

 

金も保険もない…外国人対象、川口で検診・相談会 難民申請中で困窮、支援者ら「フォローする制度を」

  • 診察を待つ外国人たち=1月27日、川口市木曽路の埼玉協同病院

 川口市の埼玉協同病院で先月、NPO法人「北関東医療相談会(アミーゴス)」(代表・後藤裕一郎医師)による、外国人など生活困窮者対象の医療検診・相談会が行われた。訪れた外国人は71人(男性37人、女性34人)で、大半は難民申請中に入国管理局の収容施設から一時的に拘束を解かれた「仮放免」になっている人たち。仮放免者は就労が禁止され経済的に困窮し、医療保険もない。支援者らは「フォローする制度が必要だ」と訴えている。

 71人の外国人はクルド人(国籍はトルコ)、ベトナム人を最多に、ナイジェリア、ネパール、フィリピン、バングラデシュなどさまざまな国籍。ホスト役を務めたボランティアは関東各県から98人が参加し、医師はアミーゴスの3人と埼玉協同病院の福庭勲副院長ら。看護師は10人。英語やクルド、ベトナム、タガログ語など12カ国語の通訳28人が集まった。法律や福祉制度の相談窓口も開設し、弁護士2人と関東各地の済生会病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)で組織する「関東地区MSW研究会」の約20人も協力した。

 相談は、仮放免の人たちがほとんどで、いつ再収容や強制送還となるか、心身ともに深刻な不安を抱えている人が多い。セネガル人の男性(37)は「日本に来て7年。背中が痛い。ストレスで歯が6本も抜けた」。バングラデシュ人の男性(49)は「不安で眠れない。安定剤を飲んで暮らしている」と訴えた。

 弁護士による相談コーナーも開設され、さまざまな相談に応じた。川越市から駆け付けた樋川雅一弁護士(37)は「仮放免の人たちは金も保険もない。風邪をひいても病院に行けないのが現実。一番弱い人々で、命に関わる問題なのに放置されている。強制送還で帰れという以外にやれることがあるはずだと思う」と語った。

 アミーゴスの事務局長でカトリックさいたま教区終身助祭の長沢正隆さん(65)は「仮放免の人たちの医療は、社会福祉法人の病院など無料定額診療をやってくれる一部の病院に頼っているのが現実。いずれこの制度も破綻する。国は仮放免者をフォローする制度を考えるべきだ」と指摘した。

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