埼玉新聞

 

<新型肺炎>花の生産者が悲鳴 卒業式が中止、花の予約もキャンセル相次ぐ 杉戸町、販売会などで支援

  • ビニールハウスに残るサイネリアの鉢植えを管理する中村さんら=杉戸町堤根

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、卒業式や送別会が相次いで中止、延期される中、式典を飾る花の予約キャンセルが相次ぎ、花の生産者が悲鳴を上げている。町内に花卉(かき)生産者が多い杉戸町では、町が役場で緊急販売会を実施するなど支援に追われている。

 「東日本大震災より被害は大きい」と嘆くのは、杉戸町堤根で花や野菜の苗を育てる園芸会社「菜花村(なかむら)」。県東部や隣接する千葉県に花を流通しており、感染拡大で卒業式やイベントで会場を飾るサイネリアの花の注文キャンセルが続いている。

 ビニールハウスには、満開に咲いたサイネリアが所狭しと並ぶ。3月のシーズンに向けて昨年秋に種をまき、この時期に合わせて栽培してきた。しかし、例年なら学校1校当たり数十鉢の単位で入っていた注文にキャンセルが入り続けている。花卉は保存が利かず、在庫管理が難しい。式典の中止は農家を直撃した。

 「他の農家でも残っていて、市場に出しても値がつかない。このまま売れ残れば、肥料にするしかない」と、代表取締役社長の中村和也さん(48)は苦しい表情を見せる。

 杉戸町はこうした農家を支援しようと13日、役場で即売会を実施。サイネリアの鉢植えを割安で販売したところ、短時間で完売した。町農業振興課は「少しでも応援できることはないかと急きょ開催した。今後も販売会を予定している」と支援を継続するつもりだ。

 中村さんによると、花や野菜の苗の流通が増えるこれからの時期、イベントや祭りでの即売などが中止になると、さらに悪循環が広がるという。

 「(依頼先から)作っておいてと言われれば育てざるを得ない。これから一番の繁忙期。感染拡大が続き大打撃になると思うと怖い。一生懸命作って、いらないと言われるのが一番つらいんだ」と不安を口にした。

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