紙おむつの持ち帰り、上尾の公立保育所で廃止へ 民間保育園なども市が支援、保護者や保育士の負担軽減
保護者を悩ませている保育園での使用済み紙おむつの持ち帰り。公立ではほとんどが実施している。1日分となると結構な量で「毎日持ち帰るのは大変」「夏は臭いが気になる」など改善を求める声があった。上尾市は今春から公立保育所の紙おむつ持ち帰りを廃止し、保育所で処理することを決めた。民間保育園などにも処理経費の一部を補助する。公立・私立ともに市が支援するのは県内市町村で初めて。保護者の負担が減ることになり、喜びの声が広がっている。
■衛生面
使用済み紙おむつの処理について、全国的に関心が高まったのは2017年ごろ。インターネットで母親らから「汚物を持ち帰るのは衛生面が心配」「買い物したり、人に会ったりできない」といった書き込みが増え、都内では保育所での処理に踏み出す自治体が増えた。県内でも18年に越谷市、19年に東松山市が予算に組み込み始めた。
18年度から上尾市に要望を出していた市公立保育所の保護者会「杉の子連合会」事務局長の入野麻希さん(37)は「市と議会が子育て世代を応援してくれようとした結果。現場の保育士さんの負担も減る」と市の決定を喜ぶ。
市は新年度から、14カ所全ての公立保育所で紙おむつの持ち帰りをなくし、所内で処理する。また私立保育園に対しては処理にかかる経費のうち、保護者負担分を0~2歳児の1人当たり月300円を限度に補助する。新年度予算に396万円を計上、3月議会で可決した。
■有料でも処理を希望
そもそもなぜ使用済み紙おむつは持ち帰りだったのだろうか。
上尾市の場合、布おむつを使っていた時代はレンタルだったため、持ち帰りはなかった。保育士がその日の体調について、便の状態などを示しながら保護者に説明していたという。紙おむつになってからは「家庭で便を確認し、健康状態を知ってもらう」との理由から持ち帰ることなった。布おむつ時代の名残だが、ある保育士によれば「帰宅して紙おむつを開ける人はほとんどいない」という。
私立保育園では保育料のほかに200円程度の実費を保護者が負担し園で処理している所が多い。一方、公立保育所では、トイレの壁のフックに掛けたビニール袋に入れていく方法やふた付きの処理バケツが用意されるなど方法はさまざま。いずれも現場の保育士が便で重くなった紙おむつを個別包装し、仕分けてためておくという手間がかかっている。
同連合会が昨年2月、千世帯にアンケート調査を行ったところ、「自己負担をしてもいいから処理してほしい」と答えた人が4割強だった。連合会会計を務める会社員八木苑子さん(38)は公立保育所に2歳児を預けている。「最初は持って帰るの?と驚いた。大変だったけれど慣れてしまったところ。でもこれからの人たちのために、実現できて良かった」と話した。
市保育課によると、公立保育所の使用済み紙おむつは公共収集し、私立保育園は事業系ごみとなる予定。5月連休明けのスタートを目指す。