問題視…男女別学の埼玉県立高校“共学化”早期に求める 苦情処理委が勧告 各校の伝統どうなる、注目は
埼玉県男女共同参画苦情処理委員は31日までに、男女別学となっている一部の県立高校について、共学化が早期に実現されるべきと県教育委員会に勧告した。苦情処理委員に対し、昨年4月に県民から「県立の男子高校に、女子の入学は認められるべき」との申し出があり、調査を重ねて結論付けた。2002年にも同様の勧告が出されており、同委員は来年8月までに是正などの措置報告書の提出を求めている。勧告は8月30日付。
苦情申し出は、昨年4月に県民個人から「(国連の)女子差別撤廃条約に違反している事態は是正されるべき」といった内容でなされた。
弁護士ら3人で組織される苦情処理委員は昨年8月から調査を開始し、県における男女別学の具体的な状況などについて県教育局との面談を実施。勧告は「女子差別撤廃条約上、男女別学であることだけでは条約違反とはされていない」としつつも、「男女の役割についての定型化された概念の撤廃が求められている」とし、共学化の早期実現を求めた。
現在、県内県立高校137校のうち、男女別学は12校で、全体の8・8%を占める。男子校は浦和(全日制・定時制)、春日部、川越、熊谷(全日制のみ)、松山の5校。女子校は浦和第一女子(全日制・定時制)、久喜(全日制のみ)、春日部女子、川越女子、熊谷女子、鴻巣女子、松山女子の7校。
勧告は、男女別学の「注目すべき点」として、管理職・教職員の性別や設置学科などについて提示。2022年度の男子校における女性管理職の割合が0%なのに対し、女子校は管理職計25人のうち女性は8人で32%であることや、男子校にのみ「理数」分野の学科が設置され、女子校にのみ「家政」「外国語」分野の学科が設置されていることなどを問題視した。
また、男女別学が維持されてきた理由の一つに各校の歴史や伝統について、「尊重されてしかるべきものである」としながらも、「公立学校における公共性を鑑みれば、性別に基づき異なった取り扱いをなすのは問題」「尊重を伴いながらも共学化を進めることは何ら不可能なことではない」とした。
宮城県や千葉県など他県の男女別学の廃止・共学化の推進状況にも触れ、「男女共同参画のために共学化が必要であるとの認識は、すでに社会共通の認識に成熟している」とし、教育委員会が策定する「魅力ある県立学校づくりの方針」への共学化に関する記載などを求めた。
勧告を受けて日吉亨県教育長は31日、「男女共同参画に関する教育推進は大変重要。社会状況の推移を踏まえた教育を実施する観点から十分検討する」とのコメントを発表した。
共学化を巡る問題は、2000年と01年にも別学解消などを求める苦情申し出があり、苦情処理委員は02年に県立高校の共学化早期実現を勧告したが、一律共学化に反対する署名約27万人分が知事に提出され、検討した県教委も03年に「早期に共学化を実現するという結論には至らなかった」と回答していた。