<新型肺炎>縞木綿のマスク好評、高密度でしっかりし薄手 蕨の会社が販売、老舗呉服店にも納入
蕨市で復元されている縞(しま)木綿「双子織」を使ったマスクを同市塚越のファッションメーカー「ニイニ」(保坂峻社長)が開発し販売している。男性用はブルーのストライプが入り、女性用はパールの飾りがアクセントになっている。1個3600円(税抜き)。
「民間検査機関からマスクとして合格判定をいただきました。密度が濃い織物であることと、撥水加工の効果もあって、花粉を防ぐ効果が認められた」と、同社のデザイナー、峻社長(72)の娘の郁美さん(43)は言う。上野御徒町の老舗呉服店にも納入し、好評だという。
同社は双子織を使ったアスリートのためのトラックジャケットを製造している。郁美さんがデザインし、改良を重ねた結果、今年3月、自慢の特産品に与えられる蕨市の「蕨ブランド」の一つに認定された。
そのころは、新型コロナウイルス感染問題が渦中に入っており、3月10日に市役所で行われた認定式では頼高英雄市長ら全員がマスク姿だった。5社が新たに認定されたが、ただ一社、郁美さんと父峻さんたちだけが白くないマスク姿だった。それがこの双子織のマスクだった。
「今、検査機関に性能検査に出しているところなんです」と郁美さんは説明していた。その後、無事に検査に合格したという。
「世の中、マスクがなくて困っている。アッとひらめいたんです。双子織がマスクにいいのではないかって」と郁美さん。高密度でしっかりしていて薄手。トラックジャケットにしたら風を防ぐのにむれない。双子織の性能がマスクに適しているかもしれない、と考えた。
洋服を作る仕事の合間に、スタッフたちがせっせと作っている。
「密度が高いのに通気がいい。不織布のマスクのように息が苦しくならないし、メガネが曇らない。10回洗濯してもしっかりしている。双子織はすごいんです」と郁美さんは話している。
■双子織は、明治時代初期に横浜に到来した丈夫で細い英国製綿糸とそのころ発明された化学染料の鮮やかな色による縞木綿。近年、歴史研究者と蕨商工会議所が協力し、現代の技術で復元されている。