埼玉新聞

 

<新型肺炎>鶴ケ島の一大イベント、脚折雨乞ピンチ 国選択無形民俗文化財 昨年は2万人の見物客

  • 2016年に行われた脚折雨乞

 鶴ケ島市を代表する伝統行事で夏の五輪イヤーに行われてきた「脚折雨乞(すねおりあまごい)」(市指定無形文化財)の開催が、新型コロナウイルスの影響で危ぶまれている。東京五輪・パラリンピックを延期に追い込んだコロナ禍は、市の一大イベントに重い決断を迫っている。保存会は近く方針を示すという。

■市の一大行事

 脚折雨乞は江戸時代から鶴ケ島・脚折地区で継承される雨乞い行事。住民が竹や麦わらで全長約36メートル、重さ約3トンの「龍神」を作り、雷電池(かんだちがいけ)まで約2キロの道のりを約300人の男性が担いで練り歩く。最後に龍神を池に入れ、降雨を祈る。

 市の一大行事で前回は約2万人の見物客が訪れた。日本の「雨乞い」を知る上で貴重な行事と認められ、2005年に国選択無形民俗文化財に選択されている。

 4年に1回、8月の第1日曜日に行われてきたが、今回は五輪・パラリンピックが東京で開かれることから、運営上の関係で9月13日に日程を変更していた。

■「慎重な対応」

 「先が見通せない」。継承してきた「脚折雨乞行事保存会」の平野行男会長(72)は声を沈ませる。

 文化庁は文化イベントの開催に当たって「慎重な対応」を求めている。例年5月に開かれる東京・浅草の三社祭が10月に延期、京都三大祭りの一つに数えられる葵祭は行列が中止となり、東北を代表する夏祭り「青森ねぶた祭」も中止に追い込まれた。

 龍神の材料は麦わらと竹。昨年11月の麦まきを皮切りに12月に竹切り、年末から2月にかけて麦踏みを行い、準備を進めてきた。5月下旬から麦刈り作業を予定していた。

 ただ、重い龍神を前進させるのに担ぎ手同士の濃厚密接は避けられない。

 東京五輪の影響で9月に日程変更するのも、台風の時期と重なる上、五輪・パラリンピック直後で警備対応の難しさが指摘される中で、ようやく落ち着いた。「1年延期するにしても来年できるといった保証はない」と、五輪と足並みをそろえた選択肢は弱いとの声もある。

■行方見守る市

 行事は保存会が主体となって執り行い、市は「支援」という立場。本年度の一般会計当初予算に市は脚折雨乞の事業補助金520万円を計上した。東京五輪イヤーとぶつかり、会場設営の資材経費、警備経費が膨らむことから、クラウドファンディング型のふるさと納税で開催経費を募ってきた。

 昨年10月~今年1月までに140万円の寄付が集まり、今月3日から2回目の寄付金を募り始めたばかり。延期や中止が現実となった場合、この寄付金の扱いを巡っても検討が必要になる。

 斉藤芳久市長は「市として、脚折雨乞の開催有無をどうこう言うつもりはない。保存会がどう判断されるか見守りたい」と話している。

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