医師300人の確保困難…さいたまの新病院で順大が公募検討 県内引き抜きなら「目的に反する」埼玉県が通知
埼玉県医療審議会(金井忠男会長)が12日、さいたま市浦和区の埼玉会館で開かれた。同市美園地区で計画されている順天堂大学付属病院の整備について、同大側が医師300人の確保が困難として公募の実施を検討していることに対し、県側が「県内医療機関から引き抜きがあれば県内の医師数を増やすという目的に反する」と通知を出したことなどが報告された。
表久仁和県保健医療部長は8月30日、同大医学部長の服部信孝氏宛ての通知で「県総合医局機構運営協議会において、近隣の病院の医師が新病院に行ってしまうとの指摘に対し、明確に否定しなかった」と指摘。「公募条件でもある医師派遣への影響にも懸念を抱かざるを得ない」と述べた。
また、県は県北や秩父地域など医師不足地域への派遣についても質問。同大側は2027年の新病院開院から稼働が安定する30年までは年1~2人を派遣し、31年以降は5人程度、最終的には20人程度まで段階的に増やすと説明した。派遣する人材は、医師不足地域などに9年間勤務し地域枠奨学金の返済を免除された卒業生を充てるという。
審議会の委員からは「(新病院の構想が出てから)約10年の時間があったのに、今、医師公募というのは話が違うのでは」「地域枠の医師は義務年限の9年間でも本人の意思で(病院が)行ってほしいところに行ってもらえない問題がある。義務年限修了後はそれこそ本人の意思次第であり、本当に派遣人数は増えるのか」などと疑念が相次いだ。
同大は今年2月、済生会加須病院に整形外科医1人を派遣。県は医師不足地域の五つの公立や公的病院に各1人は早期に派遣を実現するよう再三求めているという。新病院建設を巡っては、11月まで基本設計を行っており、年内には新たな進捗(しんちょく)状況の報告があるとみられる。
同日の審議会では新たな会長の人事が審議され、委員の推薦を受け、県医師会の金井会長が継続して就任することが決まった。