埼玉は何もないのではない…と言える理由 ひとりの女優が見た埼玉 「愛」で温かい埼玉県民が反発するとき
誕生から150年を迎える埼玉県。関東平野と秩父山地を擁する県土では、県民が長い時間をかけて文化や産業を培ってきた。そんな埼玉の魅力は何か、未来へのテーマはどこにあるのか。埼玉に育まれるとともに埼玉を育ててきた人たちに語ってもらう。
■「何もない」と言わせない 団結力で新しい波を/タレント、さいたま観光大使・村田綾さん
大好きな埼玉のことを話すのがうれしくて仕方がありません。さいたま市大宮区で生まれました。浦和実業高校在学中の15歳で芸能活動を始めた頃は、早く東京に行って有名になりたい、と思っていました。けれども「REDS WAVE」(浦和のFMラジオ局)でパーソナリティーを務めたことをきっかけに埼玉関係の仕事が増加。地元の良さ、人の温かさに引かれ、20代半ばで「埼玉に根付こう」と決めました。
テレビや映画でいつも目にする女優になるのが私の夢。まずは県民に知っていただき、それから埼玉と一緒に全国進出しようと奮闘中です。影響力があれば、埼玉をより発信できるので。だから2018年のゆるキャラグランプリで優勝し、有名になったカパル(志木市文化スポーツ振興公社のキャラクター)は憧れです。
交通の便がよくて住みやすい。少し足を伸ばせば田園が広がる。都会と田舎を同時に感じられるところもお気に入りです。県民性でいえば、浦和レッズサポーターで例えると分かりやすいのですが、一致団結する力がものすごく強い。サッカーに限らず、地元愛、商店街愛、母校愛などを持ち、応援しようと団結したときには、すごい力を発揮するのを見てきました。
けれども逆に、輪に入っていないと「あそこは違う」と反発しがち。例えばSNSで浦和をPRすると、「大宮は?」と反発され、大宮をアピールすると、「与野は? 岩槻は?」と反応がくる。同じ埼玉なのにもったいない、一緒にやればいいのにと思ってしまいます。私は観光大使として全部を広めたいです。
「埼玉には何もない」と言われているのは重々承知しています。けれど、テレビ局やラジオ局の人から「取材したいので面白い場所を教えて」と言われたとき、困ったことは一度もありません。紹介したい観光スポットや店がたくさんある魅力の詰まった県です。それなのに「何もない」のは、県内全域で店や観光がめいめい頑張っており、(代表する)一つを認めて押し上げられない、みたいな。「これが埼玉」はつくりづらいのかなと思います。だから最近はとにかく埼玉に来て、皆さんが「おいしい、すごい」を探してとPRしてます。
30、40代の社長さんで新たな試みをする人が増えています。違うジャンルでも手を組み、埼玉を盛り上げようとするのが特徴。また、店名に「埼玉」と付けたり、県産に特化したりと地元を大切にする人も多い。みんなで団結すれば、埼玉から新しいものを生み出せる。楽しみだし、私も皆さんと一緒につくりたいです。
■むらた・あや
さいたま市出身、同市在住。タレント・女優。2017年、さいたま観光大使に就任。50歳以上の県民に地域活動への参加を促す「ちいきデビューひっぱりガールズ」のリーダー、長瀞観光アンバサダー、県防犯スペシャルサポーター、恋たまキューピッド(SAITAMA出会いサポートセンター)としても活躍。34歳。