<コロナ禍の介護>感染増で家族に会えぬ施設の高齢者、意欲低下で床ずれ 職員悩み「PCR検査優先して」
新型コロナウイルス対策のため、2月中旬から入所者との面会を禁止していた北本市の特別養護老人ホーム「チェリーヒルズ北本」は6月上旬から、1日5組限定で面会の場を設けた。ただ7月に入り、再び感染者が増加してきたことに伴い、1日5組限定を維持しながらビニールシート越しの対面にした。
施設には、在宅での生活が困難になった70~103歳までの男女約90人の高齢者が生活を送っている。認知症を抱え、面会禁止の状況を理解できない入所者の中には、家族に会えない不安で、起き上がる意欲が低下し、皮膚の血流が滞ってしまう症状(床ずれ)が見られた男性もいる。
白石敏子施設長(63)は「入所者は、家族に会えないことへの不安が健康面に大きく影響する。面会を禁止にしても、家族と顔を合わせ、言葉を交わせる場はつくっていく」と強調。施設は元気で過ごしている入所者の写真を家族に郵送したり、電話やオンラインで気軽に対話できる場を設定するなど、入所者と家族が共に安心できる環境づくりに力を入れている。
感染再拡大で懸念されるのは無症状の人が少なくないことだ。基礎疾患があり重症化のリスクが高い高齢者を守るため、介護施設はより厳重な予防策を取らざるを得ない。
施設関係者は1日3回の検温を徹底しているが、女性従業員(44)は「熱が37度くらいある時は、出勤してもいいのかと不安になる。職員が足らなくなってしまうことを考えると、簡単に休むことはできない」と悩みを打ち明ける。
入所者に不自由のない介護サービスを提供するためには、従業員の一定数の確保が不可欠。同施設に在籍する約70人の従業員は、各持ち場で重要な任務を担っている。一時的な微熱を理由に一人が欠勤してしまうと、全従業員に大きな負担を与えてしまう。
女性は「今は無症状の感染者も増えてきているので、たとえ平熱でも、常に気を張っていなければならない。いつも安心した状態で入所者の対応に当たりたい」と話す。
白石施設長は長期間の安全対策を見据え、「介護に携わる人たちがPCR検査を優先的に受けられるように配慮してほしい」と国や県に求めている。
県内の別の介護施設の施設長によると、介護士は不足気味で、就職活動の時は、1人当たり約3事業者の取り合いになるという。「介護職は募集をかけてもなかなか人材が集まらないのが現状。今後の業務に支障を来すことのないよう、従業員たちに感染の有無を確認してもらい、働きやすい環境を与えてあげたい」と白石施設長は望んでいる。