クマ「積極的な駆除は自粛」でも…埼玉で狩猟解禁 悩み、警戒の猟友会員 遭遇したら「銃向けるしか…」
埼玉県内の捕獲禁止区域外で15日、鳥獣の狩猟が解禁された。秩父市大滝を狩猟エリアとする奥秩父猟友会大滝班のメンバーは、午前7時ごろ龍泉寺(同市大滝)付近に集合し、山林へ出発した。今年は全国でクマの出没が多発し、人的被害も相次いでいる。県内でも目撃情報が多数寄せられているが、個体数維持のため積極的な駆除は自粛するよう求められている。農作物被害などを食い止めるため、野生鳥獣の駆除は欠かせないが、クマと遭遇した場合どうするか。猟友会関係者は「身の危険が迫った場合は銃を向けるしかない」と語る。
県は毎年11月15日から3カ月間、マガモやニホンジカ、イノシシなど、鳥獣保護管理法施行規則によって選定された鳥獣46種類の狩猟を解禁している。ツキノワグマも対象に含まれているが、安定的な個体数維持の観点から、人身被害を防ぐ目的を除き、狩猟者にツキノワグマの狩猟自粛を要請している。
県みどり自然課によると、県内のツキノワグマは、秩父地域や飯能市、小川町など県北西部を中心に目撃情報があり、2020年の調査では、推定150~170頭生息。関東山地(埼玉、群馬、長野、山梨県、東京都)に生息する個体群の一部であると考えられ、県は関東山地全体の個体群管理を基準に、狩猟自粛を求めている。県内でクマによる人的被害は18年10月に秩父市内の登山道で、登山者がクマ2頭に遭遇して軽傷を負って以降、発生していない。
秩父市によると、今年4月から11月15日までに市民らから寄せられたクマの目撃情報は、前年同期より42件多い70件となっている。
奥秩父猟友会の青木博志会長(74)も今年、大滝地域でクマの出没が増えているのを実感している。狩猟中のクマとの遭遇は年に1度あるかないかだったが、今年は既に2頭目撃した。「11月に入るとクマは冬眠する場所を求め、山奥に引っ込む習性がある。今年は秋まで高温傾向が続いたため、まだ民家付近に潜伏している可能性もある」
秩父地域では、野生鳥獣による農作被害が毎年後を絶たたない。各地区の猟友会員らが年間を通して行っている有害鳥獣駆除は、住民の生活や自然環境を守るために欠かせない取り組みだ。同班は昨年、ニホンジカを100頭以上捕獲。今年も民家敷地内にある野菜や柿などの食物が獣類に荒らされ、駆除の依頼を多く受けている。
この日の狩猟は、さいたま市や都内の会員も駆け付け、計10人で実施。猟銃や無線機、ナイフなどを携え、クマの遭遇に注意を払いながら、ニホンジカやイノシシの狩りを行った。
今年はクマによる被害報告とともに、「なぜ殺すのか」などと駆除に対する苦情も多く寄せられた。会員最年長の山中隆平さん(80)は「クマの目撃情報が多いからといって、有害鳥獣駆除をやめるわけにはいかない。身の危険が迫った場合は銃を向けるしかないが、個体数維持のため、クマに遭遇した場合は、自分の存在をしっかり知らせて被害を未然に防ぎたい」と話していた。