修繕費など年5億円…埼玉・嵐山の「国立女性教育会館」国が閉鎖方針 「愛郷心の原点」町などは存続要望
女性教育の振興により男女共同参画を推進する埼玉県嵐山町の「国立女性教育会館」について、国から閉鎖の方針を伝達されたとして、同町の佐久間孝光町長は県庁を13日訪れ、大野元裕知事に存続への協力を要望した。佐久間町長は「会館は町民の愛郷心の原点と言える場所。施設老朽化や交通利便性が課題で変化はやむを得ないかもしれないが、県も思いを共有し、協力してほしい」と訴えた。
女性教育会館は全国で唯一の女性教育に関する国立施設として、1977年に設立された。佐久間町長によると、11月29日に内閣府と文部科学省の職員が訪れ、「老朽化が進み、修繕費などが毎年5億円ほどかかる。維持は難しく、最終的に撤去を考えている」と伝えた。町長は「町議会開会前日という時期に大切なことを説明するのはどういう意味なのか」と疑問視した上、「『12月中に大臣とやりとりをする』とも言われ、私たちの意見が反映される余地がないと感じた」と振り返った。
国からの伝達を受け、町議会は存続を求める意見書を採択。町は今後、国に要望書を提出する。大野知事は佐久間町長に「(閉鎖は)決定ではないと思うが、移転の結論は根拠がなく、県として受け入れや理解はできない。丁寧に地元の理解を得るべきであり、共に頑張りたい」と協力の意向を示した。
時代の変遷に伴い男女の教育水準の差はほぼ解消され、国では女性教育会館の役割を男女共同参画の推進に移行することが議論されている。昨年には主管を文科省から男女共同参画を扱う内閣府に移管する方針も示されている。文科省の担当者は取材に「年度内に閉鎖するという事実は全くない。決まったことはない」と一部の報道を否定したが、「コロナ禍で進んだ研修のオンライン化などを考慮した機能強化の必要性や、施設維持が難しいという課題があることは事実」と話した。
県内では県男女共同参画推進センター(ウィズユーさいたま)が連携するなど、協力関係が構築されている。全国的な女性組織の会長などを歴任した柿沼トミ子さんは、自身が県職員だった創立当時を「日本唯一の女性教育施設が県にできてうれしく、期待しわくわくした」と振り返る。「(都心から)遠すぎて不便と言うが、雑念を離れて学びに集中する拠点となった。日本はジェンダーギャップなどで世界から遅れており、移転するとしても機能は維持してほしい」と存続を望んだ。