埼玉新聞

 

<熊谷小4ひき逃げ>事件から11年、コロナでも止まらぬ時効 犯人捜す母戦う ラジオ出演やSNS活用も

  • 「情報提供は息子の事故だけでなく、全国の未解決の事故の証拠にもつながるかもしれない」とブログで情報提供を呼び掛ける母親=14日、熊谷市

 熊谷市で2009年、小学4年の小関孝徳君=当時(10)=が死亡した未解決のひき逃げ事件が30日、発生から11年となった。捜査継続が決まってから1年。今年は新型コロナウイルスの影響を受け、街頭活動は自粛に追い込まれ、情報提供も激減した。「コロナでも時効は止まってくれない」。母親は関係省庁への嘆願書の提出や会員制交流サイト(SNS)での情報発信などできる活動を続け、事件の解決と時効撤廃のために声を上げ続けている。

 「怒濤(どとう)の1年」。時効目前となった昨年はそんな言葉が当てはまる年だった。

 1月、県警が証拠品として保管していた孝徳君の腕時計を紛失していたことが発覚した。母親はその後、ブログを開設し、時効撤廃を求める署名活動や嘆願書の提出を開始。民間の事故調査会社に依頼した証拠品の再鑑定では、10年目にして初めて2台の車にひかれた可能性が浮上した。

 時効目前となった9月、県警が自動車運転過失致死罪から危険運転致死罪に罪名変更し、捜査を継続することを明らかにした。時効は10年延長され、証拠品の紛失に関与したとされる県警交通捜査課の元警部補(62)は公文書毀棄(きき)などの疑いで書類送検された。

 「母としてできることはこれが最後かもしれない。体が壊れてもいいからやろうという思いだった」と母親。10年で終わってしまうはずだった戦いは、捜査継続という形で11年目へと希望をつないだ。

 しかし、今年は新型コロナウイルスの感染が拡大。定期的に行っていた街頭でのビラ配りや周辺地域へのポスティングなどは2月以降、自粛に追い込まれた。「コロナでも時効は止まってくれない」。もどかしさを痛感し、地域のラジオ番組への出演やSNSの活用など、コロナ禍でもできる活動に切り替えた。

 4月にはこれまで嘆願書を提出してきた交通安全議員連盟総会(東京都千代田区永田町・衆議院第2議員会館)に出席。なぜ時効撤廃を求めるのか、直接思いを伝えた。

 「証拠もないのに過失運転と危険運転を判断する基準はどこにあるのか。逃げ得を許すような加害者寄りの法律はおかしい」。何度も訴えていくつもりだ。

 現在も街頭活動がいつ再開できるか見通しは立っていない。しかし今後は、証拠品の紛失に絡んで公文書毀棄罪で在宅起訴された元警部補の裁判も待っている。当時、どんな捜査がされ、どうして紛失したのか、「一連の経緯を聞きたい」と公判を待つ。

 「犯人が亡くなっていたらどうするのか」。長く活動を続ける中でそんな言葉を投げ掛けられることもあった。しかし、そんなことは関係ない。「生きていると信じ、生きていれば必ずどこかにいると信じて動いているのだから」。事件が解決されるまで母の戦いは終わらない。

 母親のブログタイトルは「《未解決》熊谷市小4男児ひき逃げ事故!」。アドレスはhttps://ameblo.jp/kosekitakanori/

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